海外トップの学生が大手企業を蹴って地方企業にキタ!

進行中の16年度のカフェテリア採用には、合わせて約1000人強が応募しているが、「不思議と上位校の応募者が集まっている」という。ナビ採用を行っていた頃は、1万人を超すエントリーがあったが、杉浦氏は「10~15人の採用であれば、1000人程度はまだ多いくらい」と話す。

実際に15年度のカフェテリア採用を突破し、入社したばかりの新入社員に話を聞いた。驚いたのは東北大や九州大、関西学院大など、全国の有名大学から集まっているだけでなく、台湾、韓国など海外からも優秀な人材が入社していることだ。台湾でもトップクラスの大学を卒業したAさんは、「三幸製菓に可能性を感じ」日本の大手電機メーカーの内定を蹴ってきた。「両親は反対しましたが、僕がこれから活躍できる企業だと思い、振り切って来た」と意気込みを感じさせる。

国内からも、理系、文系、大卒、院卒とバラエティに富んだ人材が集まっているのも特徴的。お互いに「あまりにバラバラな人が集まっていて、内定式では驚いた。それでいてどこか真面目、という共通点も感じる」と話す。

彼らが選んだ選考方式は、「交通費がかからないから」という理由で「遠距離就活」の人が一番多かったが、「出前全員面接会」で一緒に面接を受けた友人同士や、自分でおせんべいを作り応募した「おせんべい採用」の人も。全員が、採用方式について「おもしろそうだと思った」「お互いに話をしっかりできた満足感があった」と語り、自社らしい選考方法を打ち出したことが、応募者を引きつけるうえで奏功した様子。

こうした三幸製菓の採用について、服部准教授は、「採用活動では、基準が曖昧なまま、多くの能力を見ようとしがちです。三幸製菓の採用のすごさは、求める人材像と会社の置かれたポジションについて事前に戦略的な分析がきちんとできていること。また、『何を見て何を見ないのか』を決め、採用段階で求めない能力を『見ない勇気』もある。だからこそ、独自の採用スタイルで、多様な人材を集めることに成功しています。今の採用のあり方を見直し、現状を変えるきっかけとなるのではないでしょうか」と語る。

労働力人口が減少し、人材採用がますます厳しくなっていく中、地方発、三幸製菓の「採用イノベーション」は、採用を戦略的に考えることで、「弱くても勝てる」採用が可能だということを証明する好例といえるだろう。

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