日本製紙クレシアの前身である山陽スコットからパッケージリニューアルの制作依頼を受け、現在の「scottie」は生まれました。1986年当時は、今では考えられないことですが、ティッシュペーパーのためだけに世界各国からおよそ20人ものデザイナーを集めて、国際コンペを開いていたのです。

デザインした人 松永 真(グラフィックデザイナー)

オリエンテーションでは、デザインの前提条件として「花柄であること」と「与えられたロゴを使うこと」が伝えられました。「弱ったなあ」と思いましたよ。花は人一倍好きだけど、どんな状況でも花が優位になるわけではない。シンプルで何一つモノを置いていない部屋なら花柄でもいい。でも、ゴチャゴチャした部屋の中で生活用品として使うティッシュペーパーが花柄だったら邪魔じゃないですか。自分でも欲しいと思えるのは、部屋の片隅にソーッと置けるくらいの、シンプルな真っ白い箱だったのです。

しかし、それではコンペで優勝できない。だから、白地にストライプのデザインを入れることにしました。ストライプは誰のものでもないけど、誰のものでもある、ニュートラルなもの。今思い返すと、箱の中にあるティッシュの断層がストライプだから、それと同じようになることも直感的に感じてやっていたのだと思います。

箱のデザインを決めたら、残るはロゴです。シンプルな箱に入るものだから、その造形はより重要になってくる。でも、山陽スコットの用意していたロゴは、とても基準を満たすものではなかった。私は、一からロゴを作り直すことにしたのです。ティッシュペーパーが持たなければならない「やさしさ」や「なめらかさ」を持つ柔らかいロゴにしようと、半年の歳月を費やしました。