ビジネスホテル業界で東横インを急追するアパホテルの女性比率が全従業員ベースで50%、支配人では13%にとどまることを考えると、東横インの「女性重視」ぶりは突出している(表参照・ルートインは求人サイトからの推定)。
現場のほとんどを女性だけで運営する会社――。その大枠を整えたのは、創業者の西田憲正である。
西田が1986年にビジネスホテル事業に参入した際、飲食店を経営していた50代女性に1号店の運営を任せて成功したことが、同社の女性重視路線の始まりだ。西田は東横インを「駅前旅館の鉄筋版」と称し、支配人を「旅館の女将」と位置付けた。女性の支配人は、男性に比べて「きれい好き、節約上手で、心配りができる」点を西田は買ったのである。
その発想は秀逸だった。女性ならではの資質がホテル経営に向いていることに加え、働き盛りである40代の女性は、企業から見れば買い手市場だったからだ。
結婚や出産のために退職し、いったんは家庭に入った女性が職場に復帰しようとしても正規雇用で受け入れる職場は今も少ない。そこへ責任を伴うホテル支配人の募集をかけると、優秀でやる気にあふれた女性が応募してくるのである。