2回目だから余計に強く感じたのかもしれないが、今回米国側の安倍総理への待遇は破格のものだった。国家元首並みとよく言われたが、それ以上にオバマ大統領をはじめ、米国で安倍総理を迎えてくれた人から「おもてなし」の気持ちが感じられたことがうれしかった。同行中、やはりいちばん感動したのは、米議会の上下両院合同会議での演説だ。日本のニュースでも10回以上のスタンディングオベーションがあった、と報じられたそうだが、現場での拍手喝采の大きさはすさまじいものがあった。議員たちが立ち上がっての拍手が鳴りやまない。最後には、事前に配られた演説原稿に、総理のサインを求める列ができたほどだ。
事前に演説原稿に目を通したときには「これで米国の議員へ伝わるのか」という不安もあった。私は英語がよくわからないので、読んだのは和文だけだが、静かな淡々とした印象だった。国会の所信表明演説もそうだが、どうしても日本語の演説は、問題点を指摘されないことを重視して官僚が作文するため、平坦な内容になってしまう。その点欧米の政治家だと、例えば、ブッシュ元大統領なら、第二次大戦中に戦闘機に乗っていて日本軍に撃墜されたというようなインパクトのあるエピソードを中心に構成される。安倍総理の演説原稿の第一印象はそういう鍵になるようなネタが足りないような感じだったのだ。
それが蓋をあけてみたらびっくりするほどの大うけ。それで聞いてみたら、今回の演説は日本語の原稿を英文に訳したのではなくて、英語に精通したスピーチライターが最初から米国人の感性に合わせて英語で書いたものらしい。だから日本語で読むとよさがなかなかわからないが、現地で米国の人の反応を見ると、英語がわからない私でも素晴らしい演説だったことを体感できた。
そんな米国側の反応を証明するのが、演説後に欧米などの著名な学者187人が発表した「日本の歴史家を支持する声明」だろう。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で知られるハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル教授や、米マサチューセッツ工科大学のジョン・ダワー教授など、世界中の知識人が集まったと言ってよいそうそうたる顔ぶれだ。