「新聞とタバコ」はもう売れ筋ではない

JR西日本のコンビニエンス事業は、子会社のデイリーサービスネットが担当している。同社がセブン-イレブンとの提携交渉を始めたのは約4年前。そこにはこんな問題意識があったと、同社のチェーン事業本部副本部長・小林卓さんは言う。

「ハートインとキヨスクの売れ筋商品は新聞・雑誌とタバコ。我々の基本的な姿勢はクイックニーズを突き詰めることで、男性ビジネスマン向けの品ぞろえだったんです。しかしこの数年は健康志向や携帯電話の普及もあり、この3つの主力商品が同時に売れなくなってきていた」

ハートインとキヨスクの売上高は2003年をピークに減少傾向が続いていた。その中で浮上したのが全国チェーンとの提携だった。この数年、JR九州や西武鉄道に進出するファミリーマートや、病院や大学との提携を強めるローソンなど、コンビニ各社はこれまで店舗のなかった場所への出店を模索している。そんななか、JR西日本にも複数のオファーがあり、社内での議論の末、4年前に交渉を一本化したのがセブン-イレブンだった。

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●1日の来店客数は全国平均の約5倍! ●5年後までに売上高1.4倍増を見込む

JR西日本管内の乗降客数は1日500万人。しかも博多駅から関西圏までをカバーする店舗網を持つことに加え、駅はその街の玄関口というアナウンス効果も大きい。結果的にセブン-イレブンの西日本への展開もさらに進むことになった。

「実際に提携してあらためて見えてきたのは、我々が持っている駅ナカの可能性でした。最初は半信半疑でしたが、男性ビジネスマンだけではなく、女性や学生、お年寄りなどもっといろんなお客様を取り込めるチャンスがあったんだな、と。クイックニーズの発想だと『おにぎりと言えばお茶だ』といった雰囲気でしたが、今では惣菜をもう一品、デザートをもう一品という広がりがある。今後は60平米ほどの手狭な店舗、改札内やホームの売店でも転換が進み、それぞれに個性が出てくると思います」(小林さん)

JR西日本によると、昨夏、切り替えを終えた店舗では、前年実績と比べて売り上げが平均で5割増になっているという。現在、デイリーサービスネットが駅ナカに展開する約500店の年間売上高は約445億円だが、両社は全ての店舗の切り替えが完了する5年後までに、その4割増の約640億円になることを見込んでいる。

女性の社会進出や高齢化が進む中で、従来の男性ビジネスマン向け中心の事業はもはや成り立たない――セブン-イレブンとの提携によって、彼らはその確信を得たわけだ。

こうした小林さんの説明や店長の藤原さんの現場での実感は、「駅」に求められる機能が、急速に変化していることの表れでもあるだろう。

(森本真哉=撮影)
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