では、夢を持てる会社や力をつけられる会社はどう見分ければいいのか。夢を持てる会社かどうかは、経営者が描くビジョンによります。本人が経営者のビジョンに共感できるなら、仕事に充実感を感じられるはずです。ただ、経営者の本気度については見極める必要があります。「社会をよくする」と夢を掲げていても、実際は自分が金持ちになりたいだけの経営者もいる。話を1回聞いただけでは難しいかもしれませんが、ウソをつく人は数回話しているうちにボロが出てくるのでわかります。経営者と話すことが難しければ、部課長クラスでもいい。いい会社は現場にも会社のビジョンが浸透しているので、彼らの発するメッセージが判断材料の一つになります。
力をつけられるかどうかという点では、仕事の質が大事です。新入社員に皿洗いばかりさせる会社では、いくら働いても成長につながりません。うちは1年目から海外に送り出して、「インド市場は任せる。なんとかしてこい」といっています。若いうちから権限と責任を持たせてもらえる会社のほうが成長は早い。
悪い情報の扱いにも注目したいところです。社員が自分の会社をブラックと評価するのは、労働時間や賃金、ビジョンや成長を含めて、「聞いていた話と違う」と感じたときです。こうしたミスマッチが起きるのは、会社が入社希望者にいいところしか見せなかったから。うちは最初に「仕事時間が長くて、オフィスも狭い」と隠さずに見せているので離職率は低いです。そういう意味でいうと、インターン制度はいい。採用プロセスで会社のありのままの姿を見せているかどうかが、ブラック企業を見抜くポイントの一つです。
ミスマッチの原因はもう一つあります。それは自分のやりたいことが明確でなく、周囲に流されるまま就職した場合です。自分の夢や価値観が曖昧な人は結局、どの企業に入っても違和感を抱きます。子どもが迷っていたら、「自分が大事にするものは何か」と問いかければいいと思います。そこを間違えなければ、ひどいことにはなりません。また、そこから先は子どもたちの人生。温かく見守ることが親の役目でしょう。
1970年、山口県生まれ。県立柳井高校、九州大学工学部応用化学科卒業後、94年、住友海上保険入社。2000年サンダーバード国際経営大学院にてMBA取得後、シリコンバレーで働く。10年から現職。