JT、ネスレ日本が事業撤退した理由
JTの飲料事業の撤退がそれを物語った。「売却は譲渡先との間に相乗効果があることが重要だが、残念ながら見出せなかった」(大久保憲朗副社長)と事業売却の道を閉ざされたJTは、事業撤退を選択するよりなかった。
ネスレ日本の場合は撤退の理由が明確で、コンビニの店舗がこれだけ増えれば自動販売機の販路は細り、「缶コーヒーは数年前に重要な事業ポートフォリオから外していた」(高岡浩三社長兼CEO)と缶コーヒー事業に見切りを付けた。自販機の販路で提携していた大塚製薬のグループ会社が、「ワンダ」のアサヒ飲料に鞍替えしたこともあり、ネスレ日本は撤退に踏み切った。替わって、オフィスに無料で設置する専用マシンでコーヒーパックを販売する「ネスカフェ アンバサダー」に注力する。
JT、ネスレ日本も缶コーヒー市場でのシェアは下位であり、厳しさを増す一方の競争に撤退を決断するよりなかった。半面、缶コーヒーの自販機による販路はコンビニに押されているとはいえ、存在感はまだ大きい。このため、飲料事業の撤退とは切り離し、継続する方向にあったJTの自販機運営事業は全国に約26万5000台を抱える魅力は捨てがたく、飲料子会社が上位に位置するビール大手3社が買収に名乗りを上げた。
一方、レギュラー・即席コーヒーの分野も風雲急を告げる。味の素は、米企業との合弁会社で、「ブレンディ」ブランドで認知度の高い味の素ゼネラルフーズ(AGF)を4月中に完全子会社とし、即席コーヒートップのネスレ日本を追撃する。家庭用、オフィス向けに入り込んだコーヒー抽出マシンも、UCC上島珈琲が新たに家庭用、ネスレ日本が外食産業向けの新型機をそれぞれ投入する。
コーヒーチェーン店に加え、コンビニ、ファストフードチェーンによる“領空侵犯”も受け、缶コーヒー、即席コーヒーの市場はそれぞれジリ貧なだけに、「コーヒー戦争」の第二幕を迎え、各社はあの手この手で生き残り策を模索し出した。