この20年で学歴の評価は変わっている

拡大路線をとった4年目からは、工樂氏はプロデューサーとして動いたり、経営者として会社全体のことを考えるようになる。

「現場の状況を聞くと、何かを言いたくなったり、デザイナーとして手を出したくなることがあります。だけど、それをこらえないと、組織をつくることができませんから。例えば、プロデューサーとして協力会社を探すことに力を注ぐことなどをして、忙しくするようにしていました。4年目以降、クリエイターとして作品をつくったときの喜びと、経営者として大きなプロジェクトが完了したときの喜びが変わらなかったのです。経営者に向いているのかな、と思いましたね」

工樂氏は、時期を見計らうことに長けている。創業のタイミング、拡大路線に切り換えるときなどだ。最近は、少子化やグローバル化の時代を見据え、外国人の採用に踏みきった。これまでに3人を採用してきた。近く、中国人と台湾人も入社するという。いずれも、日本の専門学校でCG制作の技術を学ぶかたわら、日本語学校で日本語をマスターした。

工樂氏は、「熱心に仕事に取り組むことで、日本人の社員たちにいい刺激になっている」と話す。

「面接のときに、日本の学生と接すると、多くはしっかりした学生に思えますが、元気がないな、やる気が本当にあるのかな、と感じることが時々あります。ここに来る外国人はやる気はすごい。そのあたりは、圧倒的に評価すべきところと思っています。彼らが国に帰る場合は、うちで身に付けたスキルなどを生かしてほしいですね」

日本企業の採用も今後は、変わっていくのではないかととらえている。

「学歴の評価は、この20年ほどで変わってきているのではないでしょうか。バブル経済が崩壊し、雇用が不安定になると、スキルなどを持った専門職がフューチャーされました。その後、好景気になると、新卒・中途の採用試験で学歴の価値が見直されたことがあるように思います。リーマン・ショック(2008年秋)で不況が深刻になると、技術を持った専門職があらためて注目されました。

結局、景気の波により、その価値が大きく変わるのが学歴なのではないでしょうか。そのように考えると、学歴はあってないようなもの、なのだと思います。何よりも、大切なのは実力であり、古いかもしれませんが、それを支える努力とやる気ですよ」

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