感謝の気持ちを伝え自己肯定感を高揚

しかし、いざ自分が老年期になると、「そこまで相手に合わせてへりくだる必要があるのか。むしろ自分より下の立場の人が、自分に合わせて気を使うべきでは?」などと考えるようになります。そのため、余計に孤立したり、周囲から敬遠されてしまうという悪循環に陥ります。

老年期になって孤独になるのは圧倒的に男性です。会社人間として生きてきた彼らの定年後、自分の居場所や社会との繋がりはほとんどありません。

そこで、自分の存在が無視されたと感じてしまい、威信を回復させようといろんなことを言ったり行動に移すため、異世代の人たちとの関係性がさらにこじれてしまいます。もし身近にこういう人がいたら、敬遠するのではなく、生きた時代が異なり、価値観の違う世代なんだということをふまえたうえで、一旦は受け入れてみてください。

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老年期における危機と心理的な対立

彼らは自己肯定感が低くなっていることが多いので、それを実感してもらうためにあえて活躍の場をつくり、「お陰で助かりました!」と感謝の気持ちを伝えれば、少しは頑固な面が和らいだり、こちらに歩み寄ろうと、彼らなりに不器用に頑張るはずです。

健康な人なら、加齢によって能力や記憶力が一気に低下するようなことはないといわれています。また、いろんなことを経験し、身につけようという習熟能力に長けていますから、多少時間がかかってもできるようになります。そこに手を差し伸べて、持ち上げることで彼らはがらりと変わるはずです。

一方、若い世代の人たちにも、他者に対する尊敬の念や、自分が知らない時代にどんな苦労を重ねてきたか、といった想像力が貧困という欠点があります。激動の時代を生き抜いてきた年長者の経験談は刺激になりますし、人生の先輩として彼らがメンター的な役割を担ってくれることもあるでしょう。

ただし、いくら頑張っても相手の頑固さが変わらないこともあります。やるだけやってみて「これはだめだ」と思ったら、見切りをつけても構いません。自分が傷ついてまで必死に頑張る必要はないでしょう。

心理カウンセラー 塚越友子(つかこし・ともこ)
東京女子大学大学院社会学修士号取得。報道・広報の仕事に携わった後、銀座でホステスに転身。豊富な人生経験と高度な臨床技法をベースにカウンセリングを行っている。
(構成=吉川明子)
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