負けがこむと、人は「万馬券」を狙う
損得勘定のなかで、人がどんな行動をとってしまうのかを説明しているものに、「プロスペクト理論」がある。プロスペクトとは、英語で、「期待」や「見通し」という意味がある。
この理論を説明するのに、次のような2つの質問がよく用いられる。
1つが「何もせずに5万円をもらえる」場合と、2つ目に「サイコロを振って奇数が出れば50万円がもらえ、偶数が出ればお金はもらえない」という選択肢があった時、どちらを選ぶかというものである。おそらく多くの人は、 確実にお金をもらえる前者を選択するに違いない。
しかし、もし次のようなシチュエーションだったらどうだろうか。
自らが50万円の借金を抱えて苦しんでいたとする。そうした状況のなかで、同じ問いをされた場合、多くの人は、リスクの高い後者を選択してしまう。
つまり、人は損失を抱えていない場面では、確実にお金をもらえる方を選ぶが、借金をしていると損を取り戻し、それをゼロにしようとする行動をとってしまうものなのだ。
わかりやすいのは、競馬などのギャンブルであろう。
負けがこんでいない状況では、確実に利益を得ようと、人気のある馬を中心に、堅実な倍率の馬券を買う。しかし、負けが込んでくると、失った金を取り戻したいと思いから、当選するのがほぼ難しいであろう高倍率の馬(万馬券)に、お金をつぎ込んでしまいがちである。そして結局、当選せずに、さらに負けが込んでしまう。
人は何事もなく利益を得られる場面では確実な道を選ぶが、損失を抱えた状況だと、リスクある選択肢を選んでしまうものである。
これを先の原野商法にあてはめれば、過去に土地を高値で買わされて、損をしている状態である。その損失を取り戻すため、相手が面識のない業者で、信ぴょう性を確認できないリスクある提案であっても、その話を受け入れて、お金を払ってしまうのだ。
よく過去に詐欺や悪質商法の被害に遭った人は、再び、儲け話を持ち掛けられると、その話に乗ってしまい、さらに金を騙し取られてしまいがちといわれる。これも同じで、以前に失ったお金を取り戻そうとして、リスキーな選択してしまうためである。