このままグローバル化が進展し、日本企業と外国企業との統合が進んだら何が起こるか。海外では35%前後もいる女性管理職に、日本人女性が部下として仕えるという構図が固定化してしまう。日本人女性は学歴でも能力でも海外と比較して決して劣っていないにもかかわらず、このような事態を招くのは非常な損失である。

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共働きでも家事・育児は「妻」

私は「夫は外で稼ぎ、妻は家を守る」という役割分担も、夫婦で話し合った結果ならばいいと思う。しかし、妻も総合職や管理職として活躍したい場合は、結婚・出産と同時に夫のキャリアは変わらず、妻だけがキャリアを大幅に犠牲にしなくてはいけない状態は不公平だ。

また、国内経済が縮小し、終身雇用を守ることが難しい今後、妻も働き続けなくては生活が現実的に厳しくなっていくだろう。一昔前は日本よりも専業主婦率が高かった欧米で働く妻が増えたのは経済的な理由であり、女性がキャリアを求めた結果ではなかった。不確実な時代は、専業主婦になりたい女性たちも現実問題としてなれないため、夫婦で経済的責任と家庭責任をシェアすることがお互いにとっていい。

結論を言えば、特に大手企業に関して、育児支援制度はそれほど不足していない。問題は、制度を活用するのが女性ばかりになっていることだ。制度ではなく、企業文化や社会と個人の価値観を考え直さなくてはならない。夫にばかり経済的な負担がのしかかり、優秀な妻のキャリアを後退させることを本当に望んでいる夫婦が実際にどれだけいるだろうか。いま求められているのは、女性の社会進出と同時に夫の“家庭進出”なのだ。

コンサルタント
パク・スックチャ

日本生まれ、韓国籍。シカゴ大学MBA取得後、米国系企業でアジア地域の人事などを手掛ける。2000年、ワークライフバランスを推進するコンサルタントとして独立。
(構成=大宮冬洋 撮影=坂本道浩)
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