5.「変人」と思われるほど努力し続けているか

もし、僕たちがアジアで圧倒的な成功を勝ち取ることができたら、後に続く人も出てくるに違いない。ただし、その時点では、僕らはさらに先を行っている。テラモーターズは日々進化していくからだ。コヴィー博士流に表現させてもらえば「刃を研ぎ続ける」ということになる。

成長を続けるためには、私たちは学び、決意し、実行し、そして、なおも学び、決意し、実行しなければならないのである。
PRESIDENT 2011年8月15日号にて対談したコヴィー博士と稲盛和夫氏。徳重社長は、稲盛氏の著書にも影響を受けたという。

僕は、京都大学の受験に失敗し、広島で浪人生活を送ったときに読書を習慣化した。なかでも起業家の自叙伝は最も好きなジャンルだ。そんな一冊に京セラ名誉会長・稲盛和夫さんの書いた『成功への情熱』がある。

この本には「強い信念を常に心に抱き続けることです。努力し続けることを放棄するまでは、失敗したとは言えないのです」と書かれている。創業間もない京セラには、ニューセラミックスの技術しかない。が、稲盛さんたちは最初から世界一という気宇壮大な夢をぶち上げて、会社を成功に導いていく。

僕の郷土、山口県の偉人・吉田松陰先生が『講孟余話』に「此の道を興すには、狂者に非ざれば興すこと能はず」と記している。現代語訳すれば「時代の変革は、情熱と狂気によってのみ成し遂げられる」ということだ。

思えば、シリコンバレーでは“クレージー”は最高の褒め言葉である。そこには、明日のスティーブ・ジョブズを夢見るベンチャー起業家がごろごろいる。彼らが発散するエネルギーは狂おしいほどだ。

僕も29歳のときからは、自分に力をつける生き方をしてきたつもりだ。社員にも「日々進化せよ」といつも言っている。「刃を研ぎ続ける」というコヴィー博士のアドバイスは、ビジネスの最前線で戦う者なら、常に肝に銘じておく必要のあるものだと思う。

※言葉の出典は『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)

徳重徹(とくしげ・とおる)
テラモーターズ社長
1970年、山口県生まれ。九州大学工学部卒業後、住友海上火災保険(当時)入社。退社後、自費留学にて米サンダーバード経営大学院にてMBAを取得。2010年テラモーターズ設立。著書に『「メイド・バイ・ジャパン」逆襲の戦略』。
(岡村繁雄=構成 向井 渉、若杉憲司=撮影)
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