70年代のオイルショックの際に登場したディーゼル乗用車は、パワー不足でうるさく、経済性のために我慢して乗る代物だった。だが90年代、ドイツのアウディが、静かで高性能な新世代のディーゼル乗用車を発売。アウトバーンを快適に走行できるパワーと、地球温暖化の抑制にもつながる燃費の良さで人気を集めた。今ではヨーロッパの新車販売台数の半数以上を、ディーゼル車が占めている。
いっぽう日本では、NOxやHCなどの削減を主眼とした排ガス規制が行われ、乗用車はガソリン、トラックやバスなどの商用車はディーゼルという棲み分けが行われてきた。産業政策としてディーゼルの排ガス規制は長年ゆるいまま放置され、それがディーゼルへの悪印象を日本人に植え付けた側面がある。
だが2005年頃、当時の石原慎太郎都知事が、ディーゼル排ガスのPMを入れたペットボトルを振りながら、排ガスの体への悪影響をアピールし、都独自のディーゼル規制の導入を発表。これを機に、日本でもディーゼルのクリーン化が急速に進んだ。今販売されているクリーンディーゼル車は、09年に施行された世界一厳しい「ポスト新長期規制」をクリアしている。
メーカーごとの戦略の違いもあり、今後日本でもヨーロッパ並みに、ディーゼル乗用車が主流になるかどうかは微妙だ。とはいえ、走行距離が長いユーザーほど、ディーゼル車を選ぶメリットは大きいだろう。エンジンがガソリン車より頑丈で、車が長持ちするのも特長だ。
乗り味は、各ユーザーの好みだろう。ハイブリッドの静かさ、ディーゼルの骨太感、ガソリンの素直さ、それぞれに魅力がある。