「モスキート音」に耳をすましながら
いま僕はファンド規模で5億円ほどのお金を預かっていて、上場会社の創業オーナーやインターネット系の上場会社などから出資を受けています。投資したお金は出資先企業が上場していく過程、あるいは事業が成功したときに回収していくことになります。すべて消えてしまうリスクもあるし、自分自身も出資をしているので、ぎりぎりのなかでやっているという感じです。
そのなかで思うのは、いまは起業家としっかり付き合っていくことがとにかく大事だということです。具体的には週次や月次で事業の進捗のチェックとミーティングをして、毎日のようにチャットで顔を合わせる経営者もいます。サービスのリリースの直前、ここが勝負どころというときは週の大半を一緒に過ごすこともあります。
彼らには他のVCも紹介しますし、メディアさんとコンタクトを取ったりすることも。起業家だけでは拾えない視点から、いろんな人を紹介してパスを出していくことがVCの大切な役割だと思っています。なので、これまでに情報発信を続ける中で、フェイスブックのフレンド数は5000人、Twitterのフォロワーも4000人ほどになりました。そのつながりを大事にしながら、仲間をつくっていきたいですね。
それから僕の特徴を一つ挙げるとすれば、朝7時から毎週30名前後の若い起業家を招いて、STARTUP SCHOOL(スタートアップスクール)というスクール型のイベントをやっています。ここにはLINEの森川社長などインターネット業界のキーマンをお招きして、講演や若い起業家へのメンタリングをしてもらっています。最近ではこのプログラムを早稲田や東京理科大などと共に開催しています。
ベンチャーキャピタリストとしての仕事をしている中では最年少の部類である自分は、まさに「モスキート音」が聞こえるかどうか、と耳をすましながら若い起業家のコミュニティを作ろうとチャレンジしています。
そうやって起業を志す若い学生たちと会っていると、本当に刺激をもらいます。彼らと出資先の経営者の人たちを同時に見ていると、思うんです。最初はね、モテたいとか、そういうモチベーションでもいい。自分のやっている事業に自信を持っている人は、どんな動機で始めた起業であれ、だんだんと使命感を持っていくようになるんだ、って。大きなことを成し遂げたいというピュアなモチベーションが、結局はいちばん大事だなんだな、と。
グローバルだとベンチャーキャピタリストってすごく尊敬される仕事なんです。それはその存在が、社会の活力を支える存在だと多くの人が考えているからです。だからこそ、成功してお金を手に入れた起業家たちの多くがVCをやる。自分のお金と知識を社会に還元することが、世の中の未来を作っていくという価値観があるんですね。
日本だとまだまだ知られていない業界ですが、社会におけるリスクテイカーとしてVCは必要です。もっと社会に認められるようになって欲しいし、そのためには自分たちのような人間がVCの世界を広げ、未来をつくっていかなければならないんだと思っています。