第五は、経営者自身の判断力を支える知性あるいは、教養である。これは本を読むことからつくものというよりは、現場での長い経験から生み出される知性である。


経営者の直感的選択への確信を支えるもの

少し性質は違うが、アリストテレスのいう知慮(フロネシス)である。これは政治の世界の優れたリーダーに倫理的に正しい行動をさせる実践的な知識である。これがどのようなものか、いかにして涵養されるのか、アリストテレスの本を読んでもよくわからない。長年の経験から培われるものだということは指摘されているが、具体的な方法は示唆されていない。知慮については、難解な論文が数多く発表されているほどだ。

経営という文脈でこのような知性について語っているのはドラッカーである。彼は、経営は一種のリベラル・アートだと言っている。専門知識にこだわらない基礎的な知識、知恵であるという意味で、この知識はリベラルと形容される。

また、この知識は実践や応用とかかわるという意味でサイエンスというよりはアートである。経営者は人文科学・社会科学の知識を洞察に利用すべきだとも彼は言っている。