伊藤忠では夕方や夜に行われる会議も多かったが、朝型にシフトするケースが増えた。

たとえば何らかの返答をしなければならないとき、従来はいろいろな人の話を聞いてから考えをまとめていたものを、自分の考えや仮説をつくってからその確認を取りにいく形に変えた。つまり自分が議論をリードし、ダメならもう一回やり直す形に変えたのだ。

メールの応答も以前は1件読んだ後、別のメールも読んでしばらく考えてから返答していたが、1件ごとに読んだらすぐ返信するように変えた。そうすると相手の返答も早まり、物事が早く進む相乗効果が生まれた。仕事の進め方を見直すことで、感覚値としては「1日8時間かかっていた仕事が6時間でできるようになった」(太田氏)。

現在の1日は、7時半に出社し、前日の積み残しやメールチェックを済ませて9時から社内ミーティング、午後から顧客とのミーティングを行い、19時半までにその日の振り返りと翌日の課題を整理して退社する。退社後は会食等がなければジムで汗を流して帰宅し、0時に就寝し6時に起床する。「以前と比べると仕事でこなせる量が非常に増え、実力が上がったと感じています。お客様と支障が生じることもなく、むしろ『いい制度ですね』と言ってもらっています。生活面ではジム通いで12キロ痩せました(笑)」(同)

同社人事・総務部の梅山和彦企画統轄室長代行によれば、会社全体の昨年10月から今年3月までの取り組み結果は、前年同期に比べ20時以降退館者が約30%から約7%へ、22時以降退館者が約10%からほぼ0名へ激減。時間外勤務時間も月間で延べ約3350時間減少。これにより時間外勤務手当は早朝割増分を含めても、約7%減少した。「この取り組みを通じ、いかに限られた時間のなかで業務を効率的に行い、成果を出していくかという意識が根づき、仕事の優先順位の付け方や見極める力が付いてきているという印象を持っています」(梅山氏)

(的野弘路、川島英嗣=撮影)
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