松岡さんのおススメ本は『アンデルセン童話集』。「雪の女王」や「おやゆび姫」、「みにくいアヒルの子」などが収録されている(岩波少年文庫は全3冊)。

さらに、親ができることがあるとするなら、少しだけ違った分野や傾向の本を与えること。興味をちょっとずつずらしていく感じです。例えば電車が好きで電車図鑑ばかり読んでいる子なら、蒸気機関車の本を与えたり、さらに蒸気機関を実用化したワットの伝記を薦めてみたりする。そうすることで、発明や科学への興味がわきだすかもしれません。ほかにも電車の小説や、鉄道会社のノンフィクションを与えてみたり……。野菜を食べない子に細かく刻んで好物に混ぜて食べさせたりするように、トライ&エラーをする。ここは親の腕の見せどころですね。

また、親としては名著を読んでもらいたいと思っているかもしれませんが、名著といわれている本やロングセラーが「誰にとってもいい本」とは限りません。本との出合いには、TPOがあります。夏目漱石を小学生が読んでその深さがわからなくても、その子が大学生になって友人に薦められて読んだら魅力がわかることもあるでしょう。同じ人が同じ本を読んでも、いつ、どんな気持ちのときに読んだかで、まったく印象は変わるもの。だから「いい本」「悪い本」は非常に決めがたいのです。

親が本の内容を知っているという“安心感”が読書を楽しくする

子供を本好きにするために何より大切なのは、親が本を読むことです。子供に「本を読みなさい」と言っている親自身は一体どれだけ本を読んでいるのでしょうか?

親は子供が読んでいる本は読むべきです。そして、親子でその本の内容について会話してみましょう。そうすれば親の想像以上に子供が“本を読めている”ことに驚くはずです。また、その子の「読み方」も見えるので、興味を示しそうな本がわかります。そして、時々は「どうだった?」と聞き、子供の読書体験を受け止めてやる。私の子供時代、母は私の本を読んでいたようで、私が本の話をしたときに「うん、あそこね」とか「あそこはどんな意味なんだろうね」とか返してくれました。子供としてはそんな何げない母の言葉で「あ、お母さん知ってるんだ!」という安心感が生まれます。そういった親との共通体験が子供たちの読書を楽しくするのです。

(田端広英=文・構成 キッチンミノル=撮影)
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