「本を好きになって知的好奇心を育ててほしい」。そんな親の願いをかなえるには、小学生のわが子にどのように本を選ばせたらいいのだろうか。読書界の賢人・松岡正剛さんに、本の選ばせ方と親の関わり方について伝授していただいた。

いつも同じような本ばかり。いろいろな本を読んだほうがいい?

松岡正剛 
雑誌の編集長、大学教授を経て、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。日本文化、芸術、生命哲学、システム工学など多方面におよぶ思索を情報文化技術に応用する「編集工学」を確立。2000年よりウェブ上で壮大なブックナビゲーション"千夜千冊"をスタート。

子供に限らず本嫌いの人がいますが、最大の原因は、「本の魅力をまだ知らない」ことです。「本の読まず嫌い」です。本の中には何でも入っているのに、その広い世界と自分の世界とが結びついていない。だから本はつまらないと思い込んでいるのです。

もっと本と自分を結びつけるきっかけをつくるといいでしょう。例えば、好きな映画の原作本や好きなスポーツのノンフィクションを薦めてみる。映像や心身の動きも言葉で表現しうるものだと気づき、「本は、自分が好きな世界を表現しているんだ」ということがわかれば、本への興味がわいてくるでしょう。

読書をするときに最も必要なのは好奇心です。興味があるからこそ、本への理解が始まるのです。まだまだあやしい本を読む年頃ではないのですから、子供の興味を尊重し読書をさせるといいですよ。

特に小学生のうちは本の「読み方」を身につける時期。「読み方」を身につけるには、一冊の本を何十回も読むという読書でもいいのです。だから、怪獣が好きなら怪獣の本を、ロボットが好きならロボットの本を、と子供が読みたいテーマの本は徹底的に読ませたほうがいい。

そして欲しがっているテーマの本を、テンポを上げてたくさん与えましょう。子供の興味が次第に満たされ、自然にほかのことに気持ちが移っていくはずです。小学生ならだいたい1~2年で興味は移り変わるでしょう。この前まで怪獣好きだったのに今は宇宙が大好きというようになれば、読書の幅も広がります。小学校のうちに4つか5つ好きなテーマが変わっていくといいですね。