「1割負担」の継続は無理
ご存じの通り、国は1000兆円近い借金を抱えており、地方自治体も財政的にひっ迫しているところが多い。その厳しい懐から介護のための費用が捻出されているわけです。
加えて社会の高齢化に伴い要介護者は増え続けています。厚生労働省の資料を見ると、14年前の平成12年の要介護認定者数は218万人だったのが、昨年末時点では580万人を超えるまでになった。なんと約2.7倍です。その増えた人数分、介護に公費が投入されるようになったわけで、とても大丈夫とは言えないのです。
今年4月に消費税が8%に増税され、さらに10%にするかどうかが議論されていますが、それには以上のような背景があります。
消費増税の理由として政府が掲げたのは、子育て・医療・介護・年金といった社会保障の安定財源確保と充実で、予想される増収5兆円のうち9割が財源安定化、1割が充実に充てられるとか。
各種の介護サービスを受ける必要が出てくる要介護3以上の人は現在約310万人。その人たちが1日1回、1万円のサービスを受けたとして介護保険で支出される費用は約28億円。公費は半分ですから1日約14億円で年間にすると約5000億円になります。5兆円の増収があれば5000億円くらいは大丈夫に思えますが、増収分の多くは年金に充てられ、残りも介護にまわるとは限りません。
増税の負担感から消費が冷えれば、見込んだ増収も入ってこない。Iさん、Wさんとも「今後も利用者の1割負担を続けるのは難しいのではないか」と言っていました。
実際、利用者の負担増の動きは出てきています。来年8月からは年収の多い人が対象(単身で年金収入280万円以上、夫婦なら358万円以上)ですが、利用者負担が2割になります。また、介護老人保健施設の食事代などの補助を縮小したり、受けられる介護サービスを要介護度によって限定したりする動きもあるようです。
一方で医療保険の財源も厳しくなっているようで、病院の病床数を削減する流れもあります。手術をしても治るまで入院していられず、すぐに自宅に帰されることになるのです。
手術は体力を消耗するため、それがきっかけで要介護になる高齢者も少なくないとのこと。かといって特養ホームをはじめとする公的な老人施設は入るのが不可能な状態ですし、民間の施設は高額で入居できる人は限られている。そんなこんなで在宅介護をせざるを得ない人は増える一方。今後は負担増に耐えながら介護生活を送る人がますます多くなるというわけです。