介護費用の9割は誰が払っているのか
父を看取った後、私はケアマネージャーをはじめ、お世話になった介護サービス事業者の方々に電話や手紙で感謝の意を伝えました。
私自身は「父に対してもっとできることがあったのではないか」という悔いがなかったわけではありませんが、介護に関しては確かな技術や知識を持ったうえで、プロの方々に父や私の不安を取り除く心のこもったサービスをしてもらえたからです。
その後、当欄での介護体験談の原稿依頼を受けたこともあって再度それらの人たちに連絡をして話を聞きました。その中に取材を超えて介護の現状と今後に対する危機感を吐露してくれた人がいます。
体験談の原稿にもたびたび登場する介護用品レンタル会社のIさんと訪問看護師のWさんです。
今回は、その時に聞いた「介護の危機」に対する事業者の本音と思われる話を書こうと思います。
「介護保険というのはありがたい制度だな」
父の介護が始まってから、しみじみ思いました。要介護認定を受けると、介護にかかる費用負担は1割で済むからです。
たとえば、最初に必要になった介護用電動ベッド。
背の部分が上がるだけでなく、体がずり落ちるのを防ぐため足の部分も少し上がるという配慮の行き届いたベッドです。この1カ月のレンタル料金が1万2000円。
それが介護保険のおかげで、1200円で借りられました。また、訪問看護や訪問入浴といったサービスの料金は1回につき1万円前後でしたが、約1000円で済みました。この額ならさほど負担ではなく、費用面の不安を考えることなく介護に専念することができます。
ありがたいと感謝する一方で、「この制度を続けていて国は大丈夫なんだろうか」とも思いました。たとえば1万円のうち利用者の1割負担を除いた9000円。これは介護保険から事業者に支払われるわけですが、それに必要な費用(財源)は被保険者(40歳以上)が納めた介護保険料と公費(国、都道府県・市町村の税金)で賄われています。
この比率は介護保険料50%、公費50%。つまり半々です。