小遣いアップが目くらましなワケ

翻ってみると結婚当初から、購入決定権をキープしたい男性と、冷静な家計の管理能力を持つ女性とのせめぎ合いが始まる。何を隠そう、男性が結婚をためらう理由の一つが、お金を自由につかえなくなること。しかし、子どもが生まれ、マイホームの購入を考える時期にさしかかると、財布の紐を奥さんに一切合財委ねるようになる。

もともと男性は外で稼ぐことに集中する攻めのタイプの人が多く、家計管理といった守りの仕事を苦手とする。一方、女性はお金の出し入れなどの管理能力に長けていることが多く、「それだったら面倒なので、いっそのことすべて任せてしまおう」となる。そして、月日がたつうちに「ものを買ってほしいと妻にねだる夫」と「夫のおねだりをいなす妻」が生まれてくるのだ。

「外車がほしい」といってきかないようなご主人の手綱を締める際に、奥さんが使う方法の一つが「お小遣い」である。「我慢したら毎月のお小遣いを1万円アップしてあげるわ」という一言で、ご主人はおとなしくなる。

行動経済学に「双曲割引モデル」があり、人間は目の前にぶらさがったお金ほど価値を高く感じ、「これで居酒屋に2、3回は寄れる」とつい手を出してしまうからだ。その結果、ご主人は数百万円の車を諦めることになる。

もちろん、家計管理が得意なご主人もいれば、それを苦手とする奥さんもいて、まったく逆というケースもある。もっとも家の購入に関してはご主人が購入決定権を持っていることが多い。その理由は完済まで20年、30年の住宅ローンを組むのがご主人だから。なんだかやるせない気持ちになるのは、私だけだろうか。

家計の見直し相談センター代表 藤川 太(ふじかわ・ふとし)
1968年、山口県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。自動車メーカー勤務を経てファイナンシャル・プランナーになる。最新刊に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』。
(構成=伊藤博之 撮影=小原孝博)
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