いいパッケージデザインとは、消費者が思わず手に取りたくなるもの。そのためには商品と消費者との距離感が重要です。もし、サントリー天然水のラベルに山や氷だけが描かれていたとすると、そのデザインをクールなものと捉え、自分と距離を感じてしまう人もいるかもしれません。それを防ぐため、花や鳥のイラストを入れ、暮らしの中の身近な存在として受け入れてもらうよう工夫しました。
機能面では、ペットボトル樹脂の使用を極力控えてボトルを薄くしたり、剥がしやすくて薄いラベルを使ったりすることで、飲み終わった後には簡単に捻って潰して捨てられる仕様に設計しています。当時、こうしたエコの視点でデザインされた商品はほとんどありませんでした。また、2リットルペットボトルではボトルの真ん中に凹みをつくり、持ち上げたときに指先が安定するようにデザインしています。
握りやすさと潰しやすさなど、相反する条件を製品として成立させるためには、各部門の連携が必要不可欠です。サントリーの場合、私一人ではなく、技術担当、宣伝担当など複数のチームで商品のデザインを決めていきます。デザイナーを社内に置く体制を「インハウスデザイン」と呼びますが、そのことがサントリーの強いブランドづくりに繋がっていると思います。
累計6億ケース! 市場シェアは18年連続トップ
「南アルプスの水」「山崎の水」から「天然水」に名称を変更し、デザインを一新。1991年の発売から現在までの売り上げは約6億ケース。ミネラルウオーター市場で18年連続シェア1位。「南アルプス」「奥大山」「阿蘇」の3つの採水地がある。
1953年、名古屋市生まれ。現在、サントリー食品インターナショナル食品事業部ブランド戦略部シニアスペシャリスト。日本パッケージデザイン協会理事長。2012年、パッケージデザインの国際賞「ペントアワード」名誉賞受賞。代表作に「BOSS」「DAKARA」「なっちゃん」など。