この20年が日本に残された最後の成長機会

前述のように安倍政権も容積率の重要性には着目している。しかし、結局は役人のさじ加減の範疇で収まっている。役人の目こぼし程度の緩和ではなく、もっと大胆に権限を自治体に委譲するくらいでないと、成長戦略にはならない。「容積率、建蔽率、高さ制限など、すべてにおいて、都道府県に権限を委譲せよ」というのが私の提案である。その権限を市町村に下ろすかどうかも各自治体が決める。政令指定都市には容積率などの決定権を持たせて、都市計画を阻害している市街化調整区域などに関する権限も一任する。

権限を中央から各自治体に委譲するといっても、安全基準や街並み基準などは従来よりも厳しくすべきだろう。地元の大学の工学部などが基準づくりに貢献して、それぞれの地域の特色を出していく。

それから東京都の条例に過ぎない日照権は、20年間棚上げにする。私はこの20年が日本に残された最後の成長機会だと思っている。その先、どうにもならない高齢化社会に突入する。ならば、この20年、目いっぱい投資と再開発を進めるべきで、この間、日照権はモラトリアム(猶予期間)にすべきである。

同じく減価償却期間をこの20年間に建設されたものに関しては半減する。減価償却期間が短縮されれば、コストが増えるので節税効果があるうえに、償却後はキャッシュフローが一気に増すので、生保など民間の投資マネーも入ってきやすくなる。

容積率の緩和に日照権の棚上げや減価償却期間の短縮化を組み合わせれば、都市計画は一気に動き出す。

自治体は都市計画の基礎部分では公的資金を注入して、地盤改良や道路整備、電線の地下埋設などを行う。財源は地方債や都市再生債を発行すれば十分賄える。アークヒルズや六本木ヒルズと同じで、まとまった開発ができれば外部から多くの人や企業が入居してくる。つまり、外部経済で従来の居住者の負担なしに都市再生ができることになる。

地盤整備などに使った公的資金の返済も短期間でできることになる。税金を投入するのではなく、債券を発行して民間にあり余っている資金が有効に使われる。

これが私の思い描く、容積率をフックにした成長戦略である。地方創生を標榜する安倍政権ではあるが、地方にはそのような成長ボーナスはない。あくまで人と企業のあふれる大都市を対象にしなければ経済成長は望めない。街並みを重視した都市の再開発を主軸とすれば、容積率や高さ制限を従来よりも厳しくするエリアが出てきても、それは住民の意思。国家が恣意的に縛るものではない。そこが重要なポイントなのだ。

(小川 剛=構成 AFLO=写真)
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