「ただ、味にこだわるあまり高価な食材を使って採算を度外視して首をしめてしまう新規出店者も少なくありません。私は原価率を30~40%にとどめ、人件費も昼前から明け方までの長時間営業ながら25~28%、鉄板のガス代など光熱費も8%前後に抑える。『とりあえず開店してしまえ』では長続きしません。リピーター客を呼ぶ味の仕込みと事前の店舗経営戦略が大事です」

さらに、小さな粉もの店を出すときに意外に難しいのが立地選びである。

「商店街のど真ん中だと、いくら狭小物件でも賃料が高くなるうえに、行列ができたとき、苦情も増えてしまう。一方で、アーケードの端や、表通りを少し曲がったところのほうが客数も不思議とアップします。店の敷地に余裕があれば、思い切って店の窓口を一歩奥に下げるのも手です。すると通行する人に邪魔にならずに自転車なども置けるし、簡易式のイスに腰かけてこそっと食べることもできる。そんなちょっとしたゆとりの空間の有無によっても、売り上げはバカにならない差がつくものなんです」

前出・望月さんの店は商店街の端で交差点の目前。たこ焼きの大手チェーン店が軒並み撤退する中、地元の人に認知される理由は、味はもちろん、「朝の通勤時間のビラ配りが日課」という望月さんの努力と、この立地の影響もあるようだ。

 

新種の粉ものメニューとは

大いに参考になる例だが、粉もの店はもう日本全国で飽和状態。新規出店は難しいのではないか。

森久保さんはあくまで強気である。

「いえいえ、お好み焼き、たこ焼きは日本人のDNAに刻まれた味。店づくりの鉄則さえ守ればまだまだ成功できるはずです。今後は新しい粉ものメニューとして、ピザをたこ焼き感覚に調理したファストフードや、ガレット(フランスの郷土料理でそば粉を使ったクレープ)を日本人に合うようアレンジしたものを仕掛けていってもおもしろいですね。たこ焼き、クレープ、ガレットを同時に販売する店なんていうのもアリでしょう」

オリジナルの粉もの料理を考案できれば、狭小でも勝機はまだあるのである。

(永井 浩=撮影)