一坪弱で粗利月150万円の店舗も
グルメジャパン研究所社長・森久保成正さんは、粉もの飲食店立ち上げの成功請負人として業界ではつとに有名だ。殺到する開業志望者に2週間、15万円の授業料で焼き方や、店の切り盛りのコツを直伝している。“森久保学校”卒業生が開店した店は全国ですでに235にも及ぶ。元酒屋店主、元焼き鳥屋店主なども多いが、飲食業未経験の脱サラ組が手がける店も60店ある。聞けば、これまでで経営に失敗したのは全体の1割だという。森久保さんは語る。
「粉ものの中でもお好み焼き・たこ焼きは最も安定経営しやすいメニューです。昼はランチになり、夜は家族の食事にも酒のおつまみにももってこい。客足の減る昼と夜の隙間時間や深夜でも、小腹を満たしてくれる“おやつ”になると好評。とにかくオールタイム、ニーズがあるのが粉ものの強みなんです」
加えて、鉄板さえ置ければいいので狭小な店でもテークアウトで十分やっていけるのがほかの飲食ビジネスにない点。そのため、森久保流は、時間が経過すると酸化する油をあまり使わないなど、冷めても美味しく食べる工夫が凝らされている。テーブルやイスがないことは、従業員を雇わずにすむということでもある。
男性客ならサンダル履きで、女性ならノーメークで気軽に買いに行ける。ほかの客の目を気にしないですむことも粉もの店のメリットである。そして、すべてが順調だとこんな奇跡も起こるらしい。
「スーパーの駐車場の片隅、一坪弱で営業する和歌山県の某たこ焼き店の粗利は、ひと月約150万円。そういう事例は決して珍しくはありません」
例えば、100坪のファミリーレストランと、たった一坪の粉もの店を比較した場合。売り上げはファミレスが上だが、儲けは粉もの店のほうが優ることもあると、森久保さんは驚くべき発言をする。ラーメン屋や居酒屋の平均的な粗利率は3割少々だが、それにくらべて粉ものは4割を超えるのだ。
カラクリはこうだ。全国チェーンのファミレスは客も多いがランニングコストも高くつく。賃貸料のほか、厨房や食器などのリース代、人件費。一方、粉もの店ならそうしたコストはごくわずかですむ。開業資金は8~10坪でも400万円程度が標準だ。前出・望月さんの場合、同じ場所でたこ焼き屋を経営していたオーナーから営業権利や常連客を“買い取る”費用などで300万円かかった。
材料の小麦粉が高騰しているものの、もともと安価で、生ものとは違って大量に仕入れても保管できるのでロスが出ない。つまり、初期費用もランニングコストも粉もの店はリーズナブルなのだ。テント式のようなシンプルな造りの狭小な店であるほど、儲かっていないように見えるが、実はがっちり儲かっている。しかし、そのことに気づく人は少ない。