「小さな部品で自社ブランドをしっかりと育てていくためには、その製品に伴ういろいろな価値をお客様に提供することが大事なんです。製品だけを提供していったら、他社の製品の影響を受けてどんどん安くなってしまいます」と金田氏は説明し、製品に関するデータをはじめ、自分たちが公開できる情報をすべて提供する。
そして、同社は3つのことに力を入れている。それは既存品のコスト競争力の強化、オリジナル商品とカスタム商品の開発力強化、そして多様化するお客との接点の強化だ。特に3つ目については、コンタクトセンターという組織をつくり、そこにお客の情報をすべて集約している。どの会社のどの部署の人間が過去にどんな問い合わせをして、どのように対応したかもわかるようになっているのだ。
それによって、一歩先を行く部品の開発ができ、こんな部品がつくれないかと話がきても、翌日には提案、あるいは試作品を届けることができるという。
こうした積み重ねがブランドの形成に役立ち、伝動と制御などの機械要素部品で圧倒的な強さを誇ることができているわけだ。営業利益率10%以上を確保しているのも、こんなところに秘密があるのかもしれない。そして、予想以上に利益を上げたときは、年末に社員に対して大入り袋を出すことにしている。今年も出して、3年連続になるそうだ。
東海地区には元気な中小企業が多くあるが、どの企業も得意な分野を持ち、自らの力で活路を開いていると言っていいだろう。「鶏口となるも牛後となるなかれ」といった諺もあるが、大きな市場で尻について走っているよりも、小さな市場でも先頭を走っているほうが、元気になることだけは間違いないようだ。
1560年に創業し、鍋、釜、灯篭などの鋳物を製造。現在は伝統的な鋳物と、その技術をベースとした伝動・制御などの機械要素部品を主に製造。鋳物事業では「鍋屋2.0プロジェクト」の下、2016年1月稼働を目指して新たな鋳物工場を建設しており、これまでにない鋳物ビジネスを展開する計画だ。
住所:岐阜県関市桃紅大地1