「自分たちで独自のものをつくって勝負していく!」……。社員が生き生きと働き、元気がある企業にはこうした特徴がある。東海3県の元気ハツラツ企業を徹底レポートする。

新製品を次々に出す秤の老舗

名古屋市中川区に本社を構える守随本店は、武田信玄とつながりを持ち、徳川家康とゆかりのある秤メーカーである。創業は1658年で、現在、18代目の早川静英氏が社長を務める。その早川氏が今でも忘れない出来事がある。

「中小企業が生き残っていくには、製品に力を持たせることしかありません」と話す早川静英社長(左)と息子の早川亘専務。

それは1967年、跡取りとして新聞社から呼び戻されてすぐのときだ。顧客から台秤の見積もりを依頼された早川氏は、意気揚々とそれを提出した。ところが一向に返事がなかった。様子を聞きに行くと、「5社から見積もりを取って、一番安い会社に発注した。守随本店は3番目に高かったよ」との返事だった。

この言葉にショックを受けた早川氏は、「値段で勝負するような秤はつくらない、他社がつくれないもので勝負する」と、それまでにない新しい秤を次々に開発した。例えば、フォークリフトスケールだ。これは、フォークリフト本体に計量機を取り付け、荷物の運搬作業と計量を同時に行えるもので、漁港などで人気を呼び、すでに1000台以上も売れている。

収穫用一輪車コンテナ計量機「とれたてくん」。収穫と同時に計量も行うことができる。

そのほか、100トンまで計量できる電子式吊り秤や、1600℃の酷熱環境でも使用できるクレーンスケールを開発。もちろん両方とも世界初のものだ。特に、クレーンスケールは自動車メーカーがエンジンなど鋳物をつくる工程で使用している。トヨタグループには100台以上納め、おかげでエンジンの性能向上に役立ったと感謝されたそうだ。

さらに、トラックの荷台が秤になっている車載計量機、トラックの重量を量れるポータブル計量機、農産物を収穫すると同時に量れる一輪車コンテナ計量機、そして変わったところではシャチ用の体重計も開発した。しかも、その体重計は薄い板状のもので、分解して女性一人でも運べる大きさだ。