こんなにも見た目が個人の評価に直結する社会になったのは、いったいなぜか。私はその一因が、女性の社会進出にあるのではないかと睨んでいる。

かつて男は仕事さえできればそれでよかった。しかし女性は、もともと美しくあることが要求されていた。したがっていま社会で活躍中の女性は、外見にも気を使い、なおかつ仕事もがんばるのが当たり前だ。この価値観が、男性にも応用されつつあるのではないか。だからというわけではないが、このたび私も3キログラムの減量に挑戦し、成功した。やはり太ってしまったら、即ダイエットをするに越したことはない時代なのである。


ハンバーガーセットを頬張り、空腹をしのぐ片岡さん。通りがかりの人が自然と避けていく。

片岡守さん(仮名)、53歳、独身。5年前友人と設立した会社が行き詰まり、消費者金融から生活費を借りたのが下流転落のきっかけ。平日は小さな広告代理店の正社員として働きつつ、土日は近所のスーパーでアルバイトの日々。

「太っている下流はまだ甘い。極貧が加わると、だんだん痩せてくる。85kgあった体重が、食糧不足で10kg減った。最後は、米さえあれば何とかなる」。バイトまでしているなら借金も返せるはずでは?と尋ねると、「沖縄の子持ちの彼女に毎月13万円送金している」とか。

「月末になると電気、ガス、携帯が止まるけど、水道は止められたことはない」と語る表情はなぜか得意げ。困窮生活に適応しすぎて、そこから脱出する意欲を失い、楽しんでいるようにさえ見える片岡さん。やっぱり下流脱出は永久に不可能か。

※「男性仕事・生活調査」
調査主体:(株)カルチャースタディーズ研究所、(株)イー・ファルコン
調査実施:(株)ネットマイル (『下流は太る!』(扶桑社)より)

(長山清子=構成 永井 浩=撮影)