何とか追加合格で入社した就職活動

同じカタカナの会社だからと、受付に押しかけると、そこに座っていた女性が「もう採用試験は終わっています」という。私が「履歴書を持参しているので、せめて人事部に通してほしい」と押し問答をしていると、そこをたまたま通りかかった人事課長が小部屋で話を聞いてくれた。とりあえず「きょうは帰りなさい」ということだったが、3日後に下宿に電話があり「試験をするから来社されたし」とのことだった。つまり、私だけのための追試である。考えてみれば、まだおおらかな時代だったといっていい。

一般教養では、国語はともかく、英語はお手の物。司法試験の勉強がその論文テストに生きた。問題は「三権分立について論ぜよ」というもので、模範解答が書けたと信じている。無事合格し、その年度の採用定員に“プラスワン”という形で社会人としてのスタートを切ったのである。中国に「人間万事塞翁が馬」という故事があるが、逃げた馬が名馬を連れてきたように、人生は何が幸いするかわからない。

この就職にしてもそうだが、どうやら私は運に恵まれているらしい。

趣味のゴルフでも、ティーショットが大きくスライスして林に行っても、ボールは9割の確率でフェアフェイに戻ってくる。仲間たちからは「香藤、おまえは他の人にないツキを持っている」といわれる。

いずれにしても、プラスワンで入った石油業界。やがて、原油や石油製品のトレーディングを命じられることになるが、そこでも、このツキはいかんなく発揮されることになる。

香藤繁常(かとう・しげや)
1947年、広島県生まれ。県立広島観音高校、中央大学法学部卒。70年シェル石油(現昭和シェル石油)入社。2001年取締役。常務、専務を経て、06年代表取締役副会長。09年会長。13年3月よりグループCEO兼務。
(岡村繁雄=構成)
関連記事
「運」を引き寄せるための「4つの方法」
「やっぱ無理……」心が折れやすい人は、なぜ折れやすいのか
自分は運がいい、強運であると言えるか
オリンピック選手に学ぶやり遂げる力
運が悪い人は、なぜ運が悪いのか?