懸念される詐欺への悪用
では、第三の矢として放たれようとしている日本の投資型クラウドだが、見事的を射ることができるのか。
まず株式型については、「大手証券会社を含めて既存の証券会社はどこもそっぽを向いていて、まったく関心がない。発行総額1億円未満という“キャップ”をかぶせられ、営業コストを考えると、とても割に合わないから」というのが証券関係者の共通した認識になっている。
また「一人当たりの投資額が50万円以下」の枠組みを目一杯使って、発行総額の上限まで資金調達すると、株主が一気に200人も増える。小規模の事業者から見ると、決算の報告、株主総会の招集や開催といった管理負担が重く、「知人10人から1000万円ずつ集めたほうがいい」となりかねない。
一方、投資家サイドから懸念を示すのがワーキンググループのメンバーだった「フォスター・フォーラム(良質な金融商品を育てる会)」の永沢裕美子事務局長で、「小口の投資家ほど投資先の経営についての関心が薄くなります。つまり、投資先に対してモノをいう“リードインベスター”が不在なまま、株主によるガバナンスが働かなくなり、株主軽視などのモラルハザードが心配されます」という。
架空の会社をでっちあげた未公開株詐欺が頻発し、株式型クラウドが悪用される恐れもある。ワーキンググループの別のメンバーは「どんな時代でも新しい制度ができれば、それを使って詐欺を考える人間が出てくる。むしろ、それを前提として考えるべきだ」といい切る。だとしたら、財務状況など事業者の実態を把握する“デューデリジェンス”が重要になってくる。
しかし、金商法の改正案で仲介業者に「ネットを通じた適切な情報提供」や「事業の内容のチェック」を義務付ける方向が示されているが、具体的な内容について金融庁は「改正案が成立すれば内閣府令で詰めていくことになるだろう」とし、関係者との議論も踏まえながら設定していく考え。それだからか、日証協も自主ルールの見直しに関して「現段階では何もいえない」というのみだ。