600兆円超の貯蓄国内消費にまわせ

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阪神・淡路大震災の「失敗」を繰り返さないために

ただし、東日本大震災では、最大の後背地として機能するはずだった首都圏が、原発事故の影響などで、「被災地化する」という問題が起きました。この影響は大きいでしょう。

原発事故は、ある意味で日本中を被災地にしました。いま九州の経済が落ち込み始めています。というのも、韓国や中国からの観光客が急激に減少しているからです。残念ながら、当分の間、外国からの観光客は戻らないでしょう。「3.11以前」に戻るという想定は楽観にすぎます。我々は「3.11以後」に立ち向かわなくてはいけません。

希望はあります。幸い日本には戦後60年のストックがある。日本銀行の「資金循環勘定」によれば、日本人の個人金融資産は約1485兆円(09年度末)で、このうち現金・預金は805兆円です。預貯金のうち600兆円以上は60歳以上の人が持っているといわれています。その1%でも、6兆円になるのです。

私は、いつも同世代にこう呼びかけています。いままで私たちが平和に生活できたのは、父親の世代が焼け野原からいまの日本をつくってくれたからだ。そして、私たちもこれだけの資産を持てた。次は我々が子や孫のために働く番だ、と。

外国人観光客を呼んで経済を活性化させよう――。それは原発問題が完全に払拭されない限り難しいでしょう。ならば、我々60歳以上の人間が、国内旅行に行くなり、物を買うなりすればいい。

江戸時代、日本は完全な国内循環型経済でした。しかもそれが高度に発達していた。土地、労働、資本の国内の資本ストックをうまく循環させていたわけです。いまこそ、国内循環型の経済を見直すべきなのではないか。そうした「パラダイス」をつくり上げれば、自然と外国人も戻ってくるように思うのです。

※すべて雑誌掲載当時

(山川 徹=構成 永井 浩=撮影)