国民の目の前できちんと議論せよ

東ティモールのPKOは東ティモールの独立を阻止しようとするインドネシアを抑える目的でスタートした。もし日本が東ティモールに自衛隊を派遣していたら、ASEANの盟主にして日本の最大の友人であるインドネシアと戦うことになったのだ。東ティモールのPKOはアメリカではなく、インドネシアと仲の悪いオーストラリアの要請によるものだった。集団的自衛権に基づいて国連PKOに参加しようというのなら、アメリカではない盟友に協力する、というケースもありうる。

一方でベトナムと中国の関係がキナ臭い。ベトナムには多くの日本企業が進出しているし、そこで働く邦人も多い。日本の国益そのものだ。ベトナムと中国の間で戦争が起こり、友好国ベトナムから要請があった場合、日本は自衛隊を派遣するのか。

憲法解釈の変更で認められる集団的自衛権とはどこまでを言うのか。閣議決定で押し通そうというのなら、安倍首相はこれを定義する義務があるだろう。私自身は集団的自衛権の行使容認に反対でも賛成でもない。どちらでもいいが、ここで一度決着をつけるべきだと思っている。

大事なのは国民の目の前できちんと議論をすること。野党や反対派は私が上記に提起したような論法で安倍首相を攻め、政府が目指している「普通の国」を定義させるべきだろう。

ありもしない事態を想定して、「そのケースは含まれる」「含まれない」などと政治家と役人が決めていくことではない。これまで、世界の国々がどれだけ多くの血と汗を流して「普通の国」をつくり上げてきたか。この議論を通じて、過去50年の諸外国の経験を学んでほしい。

朝日新聞的な戦後民主主義というものが、いかに日本人の目を現実から逸らしてきたか。そのことに少しでも早く気付いて、世界にキャッチアップしてもらいたい。

(小川 剛=構成)
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