韓国はベトナム戦争で犠牲者5000人
続いて議論しなければいけないのは、国連の平和維持活動(PKO)との兼ね合いである。現行のPKO協力法では自衛隊に許されるのは後方支援だけで、武力行使はできないことになっている。集団的自衛権が解禁された場合、自衛隊はどこまでPKOに従事できるのか。
これも過去の事例からエグザンプルを挙げて問い詰めるのが効果的。私ならこのように質問する。
「安倍さんが頭の中に描いている普通の国とは、どこの国ですか? 韓国ですか?」
過去10年のPKOを振り返っただけでもソマリア、アンゴラ、西サハラ、東ティモール、レバノン、ハイチ、アフガニスタンなど10回以上実施されているが、アジア太平洋地域でPKOに積極的なのが韓国とオーストラリアだ。韓国は現国連事務総長を出していることもあって熱心だが、東ティモールでは5人、アフガンでは3人の死者を出している。もっと言えば、韓国はベトナム戦争に最大5万人派遣して約5000人(10%)の犠牲者を出しているのだ。
「5000人の犠牲者を出すのが普通の国か?」と安倍首相を攻めれば、「いやいや、韓国は特殊な国だ」と絶対に言い始めるはずだ。
ではオーストラリアはどうか。オーストラリアはほとんどのPKOに派遣しているし、多国籍軍にも率先して参加している。オーストラリアのジョン・ハワード元首相とイギリスのトニー・ブレア元首相は「ブッシュのポチ」と呼び称されたほどだ。
恐らく安倍首相は「オーストラリアも違う」と言うだろう。同様にPKOに積極的に参加しているイギリス、フランス、ポーランドなども決して、「普通の国」などではない。同じ敗戦国のドイツにしてもアフガンで54人の犠牲者を出している。実際、アメリカに要請されてアフガニスタンに派兵した国は14カ国になるが全ての国が2桁以上の戦死者を出している(表参照)。日本が「普通の国」ではなかったことの幸せをこの表を見ながら感じてもらいたい。
エグザンプルを挙げていくと、結局、安倍首相は答えられなくなる。最終的には「普通の国ではあるが過去に事例はない」と認めざるをえなくなるのだ。つまり、安倍首相の言う普通の国とは「安倍首相の御意のままにアメリカ軍に協力する“特殊な国”」ということになるだろう。