■人間の能力は、未来に向かって限りなく伸びていく可能性を持っている

人間は無限の可能性を持っているので、高く困難な目標を設定しようということ。稲盛の前で「できません」というのは絶対の禁句。

■魂をエンカレッジしないと、人間はどんどん利己的に動いていってしまう

稲盛は「肉体ではない、いわゆる魂というものも人間は持っている」と説く。魂をエンカレッジする(励ます)ことで、利他的、つまり他者を利するような人間にならなければいけないと考えている。さらに、稲盛はこの世に生きる意味を「魂を磨き、少しでもましな人間になるため」と語る。

■トップに立つ者は、たとえ喧嘩で負けてぼろぼろになっても、自説が人間として正しいものであると信じるなら、決してそれを曲げないという闘魂が必要なのです

稲盛が説く「経営12ヵ条」のなかに、「燃える闘魂」がある。経営にはいかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要、というものだ。そして、「強引なまでに自説を強要できることは、リーダーシップの大切な要件である」とも。ただし、「自説を構成するものは、その人の持っている哲学なのだから、その哲学に普遍性と正当性がなければ、とんでもないリーダーシップになってしまう」と付言する。

■謙虚にして驕らず。さらに努力を

たとえ事業が成功して自信をつけても傲慢な人間にならず、経営者は決して謙虚さを失ってはいけない。どんな成功にも驕らず、人間性を高めていかなければならないという戒め。

■利を求むるに道あり。利を散ずるにも道あり

「利」を追求するのが企業経営だから、社会正義とは相容れないものではないか。稲盛は若い頃からそうした疑問を抱いていた。経営の「いろは」も知らないまま会社を興し、何を基準に判断を下せばいいのか悩んだという。そして、経営の指針に「人間として正しいことを判断基準としよう」と決める。そこには、「人生も経営も、同じ原理原則で行われるべき」という信念があった。

(文中敬称略)

参考図書・雑誌・資料=『生き方』(サンマーク出版)、『働き方』(三笠書房)、『人を生かす』(日本経済新聞出版社)、『稲盛和夫の経営塾 人を生かす』(同)、『稲盛和夫の経営塾高収益企業のつくり方』(同)、『稲盛和夫の実学』(同)、『稲盛和夫の哲学』(PHP研究所)、『新しい日本 新しい経営』(同)、「プレジデント」誌。ほかに稲盛氏の講演・祝賀会スピーチなど。

(吉田茂人=文・構成 若杉憲司=撮影)
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