<strong>稲盛和夫</strong>●1932年、鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年、京都セラミック(現京セラ)を設立し、社長、 会長を経て、97年より名誉会長。84年には第二電電(現KDDI)を設立し会長に就任。現在、同社の最高顧問。経営者のための経営塾『盛和塾』の塾長として後進の育成にも力を注ぐ。『働き方』『稲盛和夫の実学』など著書多数。
稲盛和夫●1932年、鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年、京都セラミック(現京セラ)を設立し、社長、 会長を経て、97年より名誉会長。84年には第二電電(現KDDI)を設立し会長に就任。現在、同社の最高顧問。経営者のための経営塾『盛和塾』の塾長として後進の育成にも力を注ぐ。『働き方』『稲盛和夫の実学』など著書多数。

経営環境がよくありません。景気低迷が企業業績にも大きく作用し、冬のボーナスの下落幅は過去最大でした。こうした状況は企業にも閉塞感をもたらし、社員の士気にもマイナスの影響を与える心配があります。それぞれの会社では、ミドルマネジメントが、部下たちのモチベーションをどう維持していくかに腐心していることでしょう。

私なら「確かに年収が減るのは辛いかもしれないが、会社と仕事が好きなら、いまこそ団結して、これまで以上にがんばろう!」と語りかけます。「ボーナスも減って、面白くない」と現場が斜に構えていたのでは、結果はますます悪くなる。会社は船と同じで運命共同体です。一致協力して、自分たちが乗る船を安定させ、前へ進めるようにしてほしいと思います。

確かに、現在は危機的状況ですけれども、こういう厳しいときこそ、がんばることで仕事も上達するし、苦難を乗り越えることで、人間的にも成長できるチャンスなのです。だから、会社のピンチを座視するのではなく、前向きに仕事をする。そして、部下をそうした方向に導かなければいけません。

厳しい状況になれば、苦境を脱するべく新天地を求めて転職しようと考える人も多いでしょう。しかし、必ずしも新しい職場に移ったからといって、成功するとは限らない。転職先での賃金や処遇が思わしくなければ、また不満が頭を持ち上げてきます。それを繰り返してしまうと、不安定な生活になりかねません。