平成25年3月1日、静岡地裁で三者協議が開かれた。協議はこれで20回目である。弁護、検察側からDNA鑑定に関する最終的な意見書が地裁に提出され、今後の証拠開示と証人尋問、証拠調べについて、協議された。

同年5月24日、静岡地裁で「袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会」の山崎俊樹事務局長への証人尋問がおこなわれた。これは、新証拠として裁判所に提出された「味噌漬け実験報告書」(平成20年)、「1年2ヶ月味噌漬け実験報告書」(平成21年)、「再現仕込み味噌・味噌漬け実験報告書」(平成22年)に関するものである。

報告書を要約すると、5点の衣類と同様の味噌漬け衣類は、最短20分で作成可能で、1年2ヵ月間漬けた状態にすると、衣類は濃茶の味噌色に変色、血液は黒色となり、検察が裁判所に提出した証拠写真とは全く異なる外観を呈する、という内容である。

同年6月25日、静岡地裁に袴田事件の第2次再審請求をしている支援団体が、署名と請願書を提出した。

支援団体とは、「浜松・袴田巌さんを救う会」、「袴田巌さんを救援する静岡県民の会」、「袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会」、「日本国民救援会静岡県本部」、「袴田巌さんの再審を求める会」、「無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会」、「日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会」である。

静岡地裁に提出されている署名の総数は、12万3109人にものぼった。

今年3月、袴田さんは獄中で78歳の誕生日を迎えた。獄中で誕生日を数えること48回。その間、絶えず死刑執行への不安に苛まれ、日夜懊悩に苦しめられたことは想像に難くない。

英国ギネスワールドレコーズ日本法人は、すでに42年間の段階で、世界で最も長く収監されている死刑囚として、認定している。米国など死刑を廃止した州では、100年以上の禁固刑に服している例が少なくないが、死刑を宣告されてなお執行されずに収監されている例としては、世界的にも稀少で、なおかつ最長なのである。この認定をわが司法関係者はいかに受けとめるであろうか。

近年、再審請求が受理され、無罪となるケースが出てきた。足利事件(平成22年)、布川事件(平成23年)、東電女性社員殺害事件(平成24年)など、いずれも冤罪がうったえられてきた事件である。この袴田事件も早急に無罪が確定されることを望んでやまない。

釈放された袴田さんを見て、思わず、

「お兄さんそっくり」

と、つぶやいてしまった。その茂治さんも他界されてはや13年。とりあえず、袴田さんにはゆっくりと静養していただきたい。

ジャーナリスト 山本徹美(やまもと・てつみ)
1956年、山口県生まれ。週刊誌、月刊誌などに執筆しながら、1992年『夢オグリキャップ』を上梓、翌年『袴田事件』、続いて、『野球界裏工作あり』『誇り 人間張本勲』とすべて書き下ろしで発表。
(写真=時事通信)
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