そこで必要なのが企業間での労働移動がしやすい環境づくりである。13年1月に発足した産業競争力会議で、再就職支援金の支払いとセットでの解雇を含め、解雇ルールの合理化や明確化が話し合われていたのも、まさにそのためなのだ。労働者を解雇せずに一時的に休業させた企業を支援してきた雇用調整助成金についても、転職向けの教育訓練や転職先への助成など、成長産業への円滑な人材移動を促す制度への切り替えも検討され始めた。こうした点について山田さんが語る。

「解雇ルールの明確化といっても、現場はケースバイケースで、そう簡単にはいきません。あくまでもセーフティーネットとのセットで考えるべきです。たとえば、官民共同出資で人材サービス会社をつくり、当面の雇用を維持することも重要でしょう。政労使ともに痛みをともなうわけで、それぞれが短期的な損を受け入れる一方、長期的な得を受け取れるように、80年代のオランダで労働市場改革を成功に導いたワッセナー合意の日本版の締結を目指したらどうかと提言しています」

リストラをプラスと捉えるのか、リストラを避けて座して死を待つのか、腹を括るときが迫っているようだ。

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