これらの企業では、自社の事業と社員にとって何が必要なのかを考え抜き、自社なりの仕組みをきちんとつくり上げている。また、そうした仕組みには、経営者や人事担当者の思いが色濃く反映されている。これらの企業では、過去や他社事例に囚われない“創造的人材マネジメント”が行われているのである。実際、サイバーエージェントとサイボウズのやり方を見ても、かなり異なっている。今、多くの企業が新たな人材マネジメントの方向を見定めることができずに苦労しているなかで、こうしたITベンチャー系企業のモデルは、はたしてどこまで次の人材マネジメントモデルとなりえるだろうか。
正直に言えばわからない。これらの企業の成功は、どこまで業界自体の成長によって支えられているかどうか判断しにくいからである。マーケット自体が成長しているとき、その流れに乗る仕組みをつくるのは、簡単ではないが、可能である。
実際、日本企業が自慢としてきた、長期雇用、内部育成、チームワークなどの要素も、戦後の高度成長のなかでつくられた仕組みである。そこでは、創造的な工夫が行われ、日本型人材マネジメントがつくられてきた。
ただ、先にも述べたように、これらの工夫を、業界が成長しているから可能、と片づけてしまうのはどうだろうか。私には、これらの企業に共通する考え方は、人材マネジメントの新たな仕組みをつくり上げていくための枠組みを提供している気がする。
理念と人に関する軸を明確にし、人のココロに訴えかけることを重視し、安心と挑戦をバランスさせ、徹底的に考えて、シミュレーションし、自社にあった人材マネジメントの仕組みをつくり上げていく。同時に企業業績のことも忘れない。こうした努力が積み重なって、新たな仕組みへの入り口が見えてくるのだろう。しばらくは、こうした企業に注目したい。