「創造的人材マネジメント」実践のカギは

第2が、人材マネジメントを実行するうえで、働く人の気持ちを徹底的に考慮することである。サイバーエージェントには、人事制度は働く人をシラケさせるのではなく、流行らせないと意味がないという考え方があるそうである。どんなに精緻に組み立てられた仕組みでも、働く人に使われてナンボである。また、サイバーでは、新たな人事制度を導入するときに、社員の様々なグループが、どういう反応を示すかをシミュレーションし、対応を考えるという。どうやったら、仕組みを社員に使ってもらえるのかを真剣に考えるための活動といえる。

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図2:サイボウズのウルトラワークの考え方

同様の配慮は、サイボウズが基本としているといわれる、働く人が働く場所と時間を可能な限り選択できるようにする、という考え方からも見えてくる(詳しくは、図2参照)。働く人の、働き方の選択をとことん可能にする考え方である。

人材マネジメントとは、人の心に働きかけ、幸せにかつ意欲的に会社に貢献してもらうための経営活動である。そのためには、働く人のココロに訴えかける必要がある。

第3が、社員の自立や挑戦と安心の二兎追求である。どの企業を見ても、働く人を突き放すのではなく、安心できる体制のなかで、社員の自立ということを強調し、環境変化に対応できる能力を身につけてもらうことを重視している。

例えば、サイボウズでの、時間・場所制限の可能な限りの撤廃という考え方は、ひとつには、様々な制限のある従業員の就労支援という面もあるが、同時に自分の仕事は自分で進めていくという仕事に関するオーナーシップの強調ともいえる。またそれが同時に人生上の変化に対応できるための仕組みともなっており、安心も提供している。

第4が、人材マネジメントや経営そのものの理念や軸が、明確で一貫していることである。両社とも、理念やミッションを明確にし、そこから求める人材像を明確に定義し、それとのフィットを常に重視している。その意味で、会社にいてほしくない人は、成果をあげられない人ではなく、価値観や仕事のスタイルが会社の求めるものと適合しない人なのである。

そして、第5が、既存の仕組みに囚われない自由な発想と工夫である。多くの企業で、新たな仕組みの導入や改革にあたって、他社事例を学習し、教科書的な意味で、“正しい”仕組みを導入しようとしてきた。その結果、自社の事業や社員に合わない仕組みが導入され、社員の不満を増大させ、結局誰も使わなくなった。

人材マネジメントで正しい仕組みとは、自社で機能する仕組みなのである。サイバーエージェントの言い方をすれば、自社の社員をシラケさせない仕組みなのである。