次がサイボウズ。これは、グループウエアと呼ばれるウェブ経由でファイルや情報の共有を可能にするソフトを提供している企業であり、同社のファイル共有サービスは、私もゼミなどで頻繁にお世話になっている。
この企業の特徴は、企業にとっての「雇用の責任」という考え方を独特にとらえており、「世の中はどんどん変化し、会社もどんな状態になっていくのかわからない」、だから「企業としては(中略)お給料を渡し続けるだけではなく、違う会社でも働けるようにするのも雇用の守り方」だと考えているという(サイボウズの山田理副社長のインタビューより)。
サイボウズの独立支援制度はどこが違うか
つまり、この企業では、雇用に関しての責任は、たとえ会社がなくなっても、どこでも働けるような従業員をつくることだという。ちょっと聞くと、10年ぐらい前のエンプロイアビリティの議論のようだが、山田氏の話を聞くと、エンプロイアビリティという言葉にある社員を突き放したイメージとは裏腹に、経営が大きく変化するなかで、従業員に“雇用”継続を提供する責任を真剣に考えているのがわかる。
実際、そのための仕組みも整っており、副業の許可、育自分休暇制度、充実した独立支援制度など、多くの施策を行っている。また、独立してしばらくは、管理機能などのサポートをサイボウズ本社で代行したり、一定の条件のもと、会社に戻ってくることを認めたりしている。IT業界という変化の多い業態で、従業員の雇用を守るために企業として何ができるのかを真剣に考えた結果なのだろう。
ほかにも、ワークスアプリケーションズという企業向けの人事・財務などの管理ソフトを提供している会社や、カヤックというスマートフォン向けのアプリ制作を主な事業としている会社などがあり、やり方は違うが、両方とも人材の採用と評価において、特徴的で、かつ深く考えられた人事施策を行っている。さらに、かなり“大手”になり始めたが、ソフトバンクや楽天などもユニークな制度をいくつも取り入れている。もちろん、いいことだらけではないのだろう。働く人から見れば、多様な意見が聞かれる可能性もある。ただ、これらの企業は、その多くが、Great Place To Work(R)Institute Japanという組織が毎年行っている、「働きがいのある会社」のランキングで、上位に入っている。