COOの立場で実績を積ませるべき

ウェバー氏を見込んで次期社長に決めた長谷川氏の判断をとやかく言うつもりはない。しかし、「1年を目途にCEOを譲る」とまで公言したのは決定的な間違いだったと思う。

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長も「息子には(経営を)譲らない」などと発言しているが、経営者は自分の選択肢を狭めるようなことを言うべきではない。コンサルタントからすれば、これは経営の大鉄則である。

資質があるなら息子に後を継がせてもいいわけで、柳井氏は「最適な人を選ぶ」と言っていればいいのだ。

長谷川氏も「来年、CEOを譲る」などと言うべきではなかった。これでもし譲らなかったら、ウェバー氏には不必要な疑念を抱かせることになる。また会見で「彼しかいない」と言ってしまったので、彼がだめだったときにはほかの人、という意思決定も白けたものになる。

「この人は適任だからCOOとして私の経営、とくに買収した企業の価値をフルに引き出すことを手伝ってもらう」と言っておけばよかったのだ。長谷川氏がCEOでいる限りはコントロールも利く。そのカードまで手放すべきではないし、いずれどこかで手放すにしても、はなから期限を切る必要はない。

たとえ長谷川氏のインスピレーションが働いてウェバー氏の資質・能力を即座に見抜いたとしても、何万人もの社員が納得するかどうかは別物だ。「さすが長谷川社長が選んだだけのことはある」と思わせるには、それだけの実績をCOOの立場で積ませるべきだろう。そこで実績を上げればいつの日か祝福されながらCEOに昇進できる。日にちを限るものではなく、目標を共有するものなのである。

武田が直面している課題は単なるコストダウンではない。買収した企業の持つ種(シード)を確実に武田という土壌の中で開花させる必要がある。それはまた、世界中の製薬会社が苦闘して、ほとんど成しえていない困難な経営課題なのである。

(小川 剛=構成 ロイター/AFLO、時事通信フォト=写真)
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