本拠地の深掘りと「地方攻め」
“ギャルの聖地”と呼ばれる、ファッションビル「渋谷109」近くに2店舗を構えるマツモトキヨシ。流行最先端の街は、商品の動きも速い。
「先週売れた商品が今週は売れないことも多い。データと来店客の動向、そして天候を加味して品揃えを考えます」
勢いよく語るのは、渋谷Part2店店長の漁(いさり)直規さん(33歳)。
女性客が7割を占める同店は、臨機応変の陳列が勝負のカギだ。取材当日は明るい髪色にする染毛剤がズラリと並んでいた。女性の髪色は、総じて茶髪から黒髪へ戻る傾向にあるが、渋谷周辺でのカラーリング需要は根強い。
POSデータの数字をにらみながら、1日のうちでも商品配置を変える。「お客様からの『○○は置いていますか?』という問い合わせが、爆発的に売れる前兆になることも多い」(漁さん)ため、そうした生の情報を取り入れながらぬかりなく商品を揃える。
1990年代後半、優香の「もうマツキヨなしでは生きていけない」、山口もえの「何でもほしがるマミちゃん」のテレビCMが話題を呼び、若い女性を取り込んだマツモトキヨシ。創業80年にあたり、改めてマーケティングカンパニーをめざすことを掲げた。若者のテレビ離れがいわれる現在、新戦略の目玉がスマホの「LINE」だ。
キャラクターのマツポリちゃん(婦警)が、世のおさぼりな女性を取り締まる設定がウケて、会員数は600万人超。ローソンに次いで2番目に多い。毎月割引クーポンが送られ、店には「このLINEのクーポンで」という女性客が訪れる。「チラシ作製に比べて、電子配信のコストは圧倒的に低い。若い層を取り込み、末永く顧客にしたい」(松本南海雄会長兼社長)と相乗効果に胸を張る。