まずは警察などと協力して「抑止力」向上から

【村田氏】カンボジアではまず職業訓練の場所をつくりましたが、インドでは子どもを売ったり売らせたりすれば、必ず有罪になるんだという抑止力を高めるのが先決。被害者が裁判で証言できるように、心理的なサポートをすることも欠かせません。そこで、警察とともに被害者を救出しているNGOや、被害者にカウンセリングやリハビリを提供しているNGOなどと手を組んで、活動を進めています。絶望的な気持ちになることはありますよ。憤りも感じます。被害の大きさには途方にくれるし、取り組まなければならないことが多すぎる。何十年かかるのか、やって意味があるのかとしり込みする部分もありました。でも、私たちはこの問題を解決するためにやっている。ずっといっしょにやってきたパートナー2人は前を向くことしか考えていないし、人格的に尊敬できて能力も高い。彼らと話しているとやっぱりがんばろうと思うんです。

現在の課題は、一にも二にも個人の会員を増やすこと。そのために村田氏は年間100回以上もの講演をこなす。Facebookでの告知に力を入れてはいるが、講演会やイベントはより効果的だ。聴衆は、わざわざ会場に足を運んで村田氏の話を聞きたいという人たち。直に話を聞けば、児童買春の解決に少しでも手を貸したいと思い、なおかつ行動する確率が高いのだ。

【村田氏】ボランティアの力もうまく借りていきたいですね。いま登録してくれているのは400名。学校での講演もやりたいんですが、スタッフを増やすとコストがかかるので、ボランティアを通じて啓蒙活動やイベントを展開していく計画です。でも、いきなり人に動いてもらうのは難しい。大事なのは関係を作っていくこと。それはカンボジアやインドで痛感しています。人身売買させない活動の実績を認めてもらったからユニセフといっしょに警察に行くこともできたし、ほかが支援をやめても警察は私たちを頼ってくるようになった。現地では日本人スタッフが人間関係を創るために飲み会に参加したり、泊まる場所も現地の人が利用するようなゲストハウスにしたりなど、泥臭い活動を続けています。一歩一歩やっていくしかありません。

スタッフと、ボランティアと、現地のNGOやスタッフと、地道に信頼関係を築きあげながら村田氏は7月から新しくなった広尾のオフィスを拠点に活動を繰り広げている。以前の代々木のオフィスより面積は広くなったが、家賃は同じだ。シビアなコスト感覚を忘れず、前進する村田氏が見つめる先には希望がある。「大変な戦いではあっても、社会は変わる。解決はできる」という確信が村田氏を、かものはしプロジェクトを支えている。

●次回予告
《デジタル時代の重要人物に訊く「実践マーケティング戦略」》第10回は、宇野常寛さん(批評家)。ウエブから始めた文化批評活動を、なぜ今どき「紙の雑誌」で続けているのか。350部からスタートした批評誌「PLANETS」の物語を訊く。12月2日更新予定。

(撮影=プレジデントオンライン編集部)
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