生活の安定、そして新たな課題地インドへ

学生時代に無報酬で活動を始め 、貯金を切り崩しながら生活していた村田氏の生活環境も変わった。

【村田氏】IT事業部の売り上げが伸び始めてからは、12万円ほどお給料をもらえるようになり、現在は、大学の新卒より多少多い程度の額をいただいています。実家も出て、都内で暮らせるようになりましたね。いま、日本人の専従スタッフが5名いますが、大企業よりは低いものの、ちゃんとお給料は出せています。

「手弁当」「無償で働いて当然」という前時代的感覚でNPO法人の活動をとらえる人はいまだに少なくないが、適正な利益をあげ、専従スタッフに活動の対価として給与を払うことのできない組織に持続的な活動は望めない。ミッションを達成することは不可能だ。被害者支援に必要な収入を確実に伸ばしているかものはしプロジェクトはそれだけゴールに近づいているともいえる。だが、2012年に村田氏はもう一つ、別のゴールを掲げることを決意した。

【村田氏】カンボジアの児童買春の被害者はかなり少なくなっていると言われます。実際、10才未満の子が働かされている売春宿は減りました。この10年でかなり改善し、ゴールが見えてきたという印象はあります。でも児童買春はカンボジアだけの問題ではありません。その一つがインドです。貧困が原因で売られるのはカンボジアと同じですが、子どもをだまして売った人、買った人が裁判で有罪判決を受けないケースが多く、抑止力を高める必要があるんです。

インドで性産業に従事する女性・子どもの数は100万人~300万人。そのうち、人身売買の被害者は数十万人規模とされる。しかし、国土が広大なため、すべてを網羅しての活動は不可能に近い。かものはしプロジェクトでは、被害者の65%が出ているとされる西ベンガル州からムンバイへのルートに照準を合わせて活動を開始した。貧困な州はほかにもあるが、西ベンガル州は他の州と違って、女性が外に(遠方に)出ることが許されている。その自由さが仇となり、売買され、大都市ムンバイまで1500kmもの距離を移動させられ、虐待を受け売春を強要されている。この人身売買ルートの縮小が新たなるゴールだ。