子どもたちが農村で暮らし続けられるために


村田早耶香さん(略歴は第7回
http://president.jp/articles/-/11150
参照)

2002年、NPO法人かものはしプロジェクトは活動を開始した。資金源はどうするか。代表の村田早耶香氏が信頼を置くパートナーである2人の副理事長が描いた構想はこうだ。まずは日本でITの受託開発事業を始め、そこで得た報酬を活動に充てる。カンボジアではパソコン教室を開き、孤児院に保護された子どもたちにIT技能を身につけてもらい、パソコンの基礎からWebのデザインやコーディングまでこなせるIT技術者に育てたところで、日本で受注した仕事をオフショア開発として現地に回すというプランである。

カンボジアの人件費は日本の10分の1以下。現地で仕事を完成すれば、じゅうぶんに利益が出る。それを子どもたちの職業訓練に回す計画は現実的に見えた。実際、パソコン教室を卒業し就職を決めた子どももいる。

だが、パソコン教室は3年後に閉鎖した。

【村田氏】なぜ児童買春(子どもが売られる問題)が起きるのか、調べれば調べるほど農村に仕事を創出することが急務だとわかってきました。売られてくる子の大半は貧しい農村出身です。いくらPCスクールで教育しても、農村で子どもが売られることを止められない。この問題の根源である農村の貧困を支援しなければ児童買春問題を根本的に解決できないんです。かといって、農村支援とパソコン教室を並行してやるには人もお金も足りない。そこで、農村支援に重点を置くことにしたんです。

子どもたちが都市部に出稼ぎに行かず、地元で家族と一緒に暮らしながらできる仕事があれば、一番いい。だが農作業では子どもが売られずに済むほどの利益は見込めず、現地の特産品であるシルクを使った事業も検討したが、先行者が多く、すでに市場は飽和状態だ。ここに新規参入しても成功を勝ち取るのは至難の業と思われた。考えぬいて、村田氏たちがようやくたどりついた答えがいぐさを使った雑貨の生産だ。雑貨は約20種類。価格は、相場よりもやや高く、コースターは現地では1ドル、日本では300円で販売している。