また、見積書の数字が間違えているとか、報告書の書き方がまずいという問題なら、上司ではなくてもどこかでだれかに指摘してもらえることもある。しかし、「空気を読む」という、気配りやマナーに関する問題については、だれも教えてくれないのである。
説教くさくならないように指摘するのは、とんでもなく難しい役目ではあるけれども、ほかの人が指摘してくれないのなら、上司であるあなたがその役を買ってでるしかない。
運が悪いといえばそれまでだが、運を嘆いていてもしかたがない。どうすれば、空気が読めない部下を、指導できるのか。そのための方法をいくつか考えてみよう。
空気を読み間違えている部下に対して、「キミは、マナー知らずだね」とやったのでは、部下のメンツを潰すことになり、ムッとされかねない。部下の反発心を煽って、かえって言うことを聞いてくれなくなる恐れがある。「マナー」や「エチケット」や「常識」という手垢のついた表現は、それだけで相手からの反発を誘発するのである。
その点、「○○すると、カッコいいよ」とか、「△□みたいなのは、カッコ悪いぜ」という教え方であれば、部下のメンツを潰すこともなく、素直に言うことを聞いてくれるであろう。自分が教え諭されているとか、怒られているとは思わないので、反発心が抑制されるからである。
たとえば、「口臭に気をつけるのは、社会人として、当然守るべきマナー」と注意されるよりも、「大切な人に会う前には、臭いの強いものは控えたほうがカッコいい」と指摘したほうが、概して、相手には受け入れられやすい。特に、若い部下ほど見栄っ張りな人が多いので、カッコ悪さを避けるために、聞き入れてくれる見込みは高くなるはずだ。
空気の読み方を教えるときには、「モテる」「モテない」という次元で指導するのも、いいアイデアだ。なぜなら、「異性にモテたい」という欲求は、男女を問わず、非常に強烈なモチベーションだからである。若い部下なら、なおさら異性に対する興味・関心も高いだろうから、すぐに自分の行動を改めてくれるはずである。