ポータル、帳合、物流を押さえよ
ネットのビジネスは難しい。集客までは何とかなっても、そこから先、稼ぐためのビジネスモデルを構築するのはたやすいことではない。
たとえばスマホなどで登録者同士が無料の通話やメール、チャットができる人気アプリのライン(LINE)。すでにユーザー数は全世界2億3000万人(国内4700万人)を超えて、3億人を視野に入れているという。しかしそのビジネスモデルを改めて問うてみれば、単なる無料の通話システム、チャットサイトでしかない。
世界には古株のスカイプ(Skype)をはじめとし、バイバー(Viber)、ウィチャット(WeChat)などライン同様の無料通話アプリがあって、いずれもダウンロード1つで簡単に乗り換えられる。今後、ラインにこだわる理由が見当たらなければ、何かのきっかけでユーザーが一斉に離れてブーム&バーストで終わる可能性もある。
ラインは主にスタンプ(テキストメッセージに挿入するイラストのこと)やゲームアプリの課金などで稼いできたが、今後は収益源を増やすため通販に乗り出すと発表した。しかし、このビジネスモデルの先行きには疑問符が付く。
ネット通販で成功するためには、ネット上の顧客の入り口である「ポータル」と商品の代金を受け取る「帳合」、商品を届ける「物流」の3拍子が揃っていなければならない。それを実証したのがアマゾンで、創業者のジェフ・ベゾスは本のポータルから入って、世界中で利用者にクレジットカードの登録をさせて帳合をひたすら拡大し、本を迅速に届けるための物流システムの整備にひたすら没頭した。結果、アマゾンは単なるネット書店でもIT企業でもなく、あらゆる商品を取り扱う世界有数の「小売業」になったのだ。
2億人超のポータルがあるとはいえ帳合も物流システムも持っていないラインが、アマゾンや楽天など3拍子揃った競合ひしめくネット通販に乗り出すのは自殺行為に等しい。既存のネット通販とは違うビジネスモデルが「見えている」のなら話は別だが。
ラインのように無認証の人々を大勢かき集めるプラットホームで金儲けをしようと思えば、3つの領域が考えられる。
1つはいわゆる出会い系のお友達サイトで、そういうものに金を払ってもいいというニーズは確実にある。
もう1つは、専門家や著名人による有料のアドバイス。「本当に美味い○○料理はこの店に行けば食べられる」とか「この料理でワインを頼むならこれ」「○○に出掛けるならこんなファッションで」「引っ越すなら○○沿線が狙い目」といった専門家や著名人のアドバイスを有料スタンプのような感覚で買ってもらう。たとえばユーザーマーケティングで「地方から出てきて東京に住んでいる若者の典型的な悩みトップ50」がわかれば、これに対するソリューションでスタンプを買う程度のお金は取れると思う。帳合や物流がなくてもできるビジネスだ。
3つ目はポイント制の活用。旅館予約サイトの中で楽天トラベルが1人勝ちしている大きな理由の1つはポイント制にある。サラリーマンにしてみれば、そこで予約して得られる楽天ポイントは上司にもカミさんにも税務署にも秘密の“ヘソクリ”になる。だから出張を命じられると、サラリーマンはいそいそと楽天トラベルで予約するのだ。