読書を欠かさず人と会うこと

写真=AP/AFLO

「多様性」の概念を理解し、日々の実践につなげることは、考え方や思考法を形づくるためにも、大事です。

私は、思考を鍛えるうえで1番大切なのは、読書をすることだと思っています。できれば毎日、難しければ2日に1回、3日に1回でもいいので、集中して本を読む時間を確保することが重要です。

読書は自分自身の「情報ソース」を多様化させるために手軽な手段です。ビジネスパーソンは、自分の仕事と関連するビジネス書を読むことが多いでしょうが、せっかく読書に時間を使うのであれば、ビジネス以外の本を読んでほしいのです。

そもそもビジネス書というのは、ある考え方の機軸となる本が存在し、それから派生して、結局はどの本も同じような主張に収斂される傾向にあります。そうであれば、「歴史」や「社会学」などの本を読んで、違う視点を学んだほうが、新しいアイデアが生まる可能性があるのです。私の専門である「グローバル戦略」でも、歴史書の中からヒントをえて、新しいアイデアを思いつくことが多いです。

そして思考を鍛えて、情報ソースを多様化するためには、なるべくいろいろな「人と会うこと」です。できるだけ、自分と違ったキャリアや背景が異なる人と話をする機会を、持つべきです。

先日、「これはすごい時間だ」と感じたときがありました。3時間ばかり、MIT(マサチューセッツ工科大学)の「メディアラボ」(デジタル技術の研究、教育を目的とする研究機関)にお邪魔したのです。

自分たちと似た思考のトレーニングを受け、同じような本を読んでいる人と話すことは、大変心地いいことです。しかしながら、メディアラボの研究者のような、私と文化や背景が全然違う人たちと話すことは、すごく刺激をうけ、勉強になります。

私自身、今は、「インターネットにおけるグローバリゼーション」を研究しているのですが、メディアラボにも、偶然、同じようなことを考えている人たちがいて、私とは、アプローチの仕方がかなり違っていたのです。特に物理学やネットワーク理論を学んでいる研究者の発想は、実に刺激になりました。

「セミ・グローバリゼーション」の時代においては、「多様性」や「差異性」を受け入れることが重要になるでしょうし、それらを上手に取り込むことが求められます。

(小川 剛=構成 市来朋久=撮影 写真=AP/AFLO)
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