アパホテルの特徴の1つとして、異例の出店速度がある。リーマンショックにあえぐ同業者が多い中でも続々と出店を続けた。なぜこれだけ強気の出店が可能なのだろうか。

社長の笑顔が眩しいアパ本社(プレジデント編集部=撮影)

「うちは東横インさんのようにオーナーから土地を借り上げたホテルとは違う。物件は自前ですから徐々に償却します。そうすると簿価利回りが1年1年上がってく。だから初めの投資は大変ですが、そのあとはジャンジャン簿価が貯まっていって、結果として楽になります。一方で賃貸借の場合、家賃に左右されてしまうし、特にひどいのはファンドバブルの頃に建てられた物件で、最初から家賃がとんでもなく高い。だから私は所有にこだわりますし、自分の会社の金で建てるから、銀行と相談する必要もない。出店スピードは他社とは比較になりません。ちょっとでもいい土地を見つけたら、すぐに現金で契約してしまう。ホテルの建設などは銀行からの借り入れも利用しますが、ビジネスホテルの基本は好立地を押さえること。そのために銀行の決済を待つのは時間の無駄です」

アパホテルは次々と超好立地を押さえ、出店を続けている。駅から徒歩3分は当たり前、歩いて1分、2分といった物件も珍しくない。「通常はホテルの立地ができない、川の上やうなぎの寝床のような場所でも、建築に詳しいアパはホテルを建設してしまう」(ビジネスホテルに詳しい関係者)という。さらにホテル予約サイトでの戦略でも抜け目がない。

「アパホテルではネットに強い人間が支配人になる。出張族は宿泊先をネットで予約します。ネットを使えば近隣で1番安いホテルはすぐにわかる時代ですから、うちは近隣のライバルを調べ、そこより100円でも安い料金設定でネットに掲載する。当然、料金は目まぐるしく変わります。例えば八百屋さんで朝と夜の大根の値段は違うでしょ。朝は高くて、昼になると半額、夕方になるとタダでもいいから持って帰ってくれ、となる。向かいのスーパーよりも高い大根が売れますか。満室が予想できる日には客室料金を高く設定するのも同じ理屈です。料金の上限は私が考えますが、あとは現場の判断、支配人の力量次第になります」