フーズマーケット事業部部長 
保田朋哉 

1975年生まれ。慶応大学総合政策学部卒業後、住友商事入社。香港への駐在等を経て、IMDにてMBA取得。卒業後はマッキンゼーアンドカンパニー(ドイツ支社)に就職。帰国後2社のネット事業の立ち上げに関わった後、2011年9月クックパッド入社。創業者の佐野氏陽光は大学の先輩。

保田部長が担当しているやさい便は、ユーザーが選択した農家から毎週または隔週で定期的に野菜のセットが直送されてくるサービスである。料金は1680円と2680円で、野菜の内容はプロである農家が選んでいる。

「寿司屋でお任せを頼むように、生産者が勧める旬の食材を送ってもらうサービス」と保田部長は説明する。見たことがない野菜が届いてもクックパッドでレシピ検索すれば調理できるというわけだ。自社で野菜を仕入れて販売するのではなく、農家に出店する場所を提供するというビジネスモデル。

野菜の販売というアイデアはもともと佐野氏と穐田代表が持っていた。ただし、クックパッドはインターネットテクノロジーの会社であり、自分たちが売り手になる選択肢はなかった。他方で同社には多数のユーザーとレシピ、技術力という資産がある。それらを活かせば農家が出店するマーケットプレイスをつくれるのではないか。そんな発想からやさい便は生まれている。

起業経験があるなら自分がトップとして事業を立ち上げたくならないのだろうか。ここで新規事業を推進するのはなぜか、保田部長に尋ねてみた。

「スピードの問題です。ここに来たほうがより早く自分のやりたいことができると思っている人は、ここに来ます。クックパッドにはエンジニアがいて、私が過去に経験した事業会社ではなかなかできないことができる環境があります。そして、自分のやりたいことと理念が一致している。これが1番大事だと思います」


やさい便
約70件のなかから好きな農家を選ぶだけ。利用者数は非公表だが、顧客は「40代の有職主婦で料理上手の人が多い」と言う。珍しい野菜には食べ方を書いた手紙が入っていることも。

クックパッドに入社する前、最初に保田部長が起業したのはインターネットを使いスポーツチームやNPOのファンドレイジング(資金調達)を行う事業である。アイスホッケーをやっていた保田部長が、企業のアイスホッケーチームがどんどんなくなっている状況を危惧し、Jリーグのように地域で支える仕組みをつくろうと考えたのだった。

こうした話を聞いていて感じるのは、社会性に対する強い意識である。そう水を向けるとこんな話が返ってきた。

「社会性という意識は別にありませんが、人生の大切な時間を使っているので意味のある仕事をしたいです。ヨーロッパにいると子供と過ごす時間が長いのですが、いまは子供といる時間を犠牲にして働いているので、それだけの価値があることはしたいと常に思っています」(保田部長)

(市来朋久=撮影)
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